要約

  • RFC 9917 は、IS-IS と OSPF の Flex-Algorithm Definition に、逆方向 Administrative Group の除外、いずれかを含む、すべてを含む、という三つの制約を追加する。
  • 受信側で観測した条件が、対応する順方向エッジを制約付きトポロジーから除外できる。しかし除外はポリシー実行の証拠であり、物理障害や実トラフィックの変更そのものではない。
  • 新設された IANA の順序付きレジストリでは将来の規則を挿入できるが、既存規則の相対順序変更、削除、統合、重複は認められない。

一本の回線を二本の有向辺として読む

A と B の間のポイント・ツー・ポイント接続は、IGP のグラフでは A→B と B→A に分かれる。A から届くフレームの CRC エラーを見られるのは B だが、保護したい経路判断は A が A→B を使うかどうかである。観測点と判断対象が反対側にある。

RFC 9917 の仕組みは、この隔たりを埋める。文書のユースケースでは、受信ノードが一定期間の入力エラーを観測する。ローカルポリシーは、その結果を逆方向エッジの Extended Administrative Group として表現できる。FAD は、順方向エッジの適格性を判定するときにそのグループを参照する。

標準化されたのは伝達と計算であり、測定値の解釈ではない。共通のカウンター、観測期間、エラー閾値、ヒステリシスは規定されていない。したがって監査記録には、生の測定値、観測場所、期間、設定・解除の閾値、ポリシー版、時刻が必要になる。それらを失った色は「分類が行われた」ことしか再現できない。

三つの制約は、それぞれ異なる条件で枝を落とす

Exclude Reverse は、指定グループのどれかが逆方向にあればリンクを除外する。Include-Any Reverse は、指定グループが一つもなければ除外する。Include-All Reverse は、必要なグループが一つでも欠ければ除外する。RFC 9917 は、IS-IS と OSPF の FAD に対応する sub-TLV を定義した。

入力が壊れた場合の境界も明確である。長さが不正な sub-TLV は全体を無視する。重複は、置かれた場所に応じて最初の出現を使うか FAD を拒否する。曖昧なバイト列が実装ごとに違うポリシーへ化ける余地を狭めている。

それでも計算は各ルーターのローカル処理だ。特定版の LSP または LSA を受け取り、RFC 9350 に従って winning FAD を選び、制約をサポートし、所定の順序で規則を適用して、初めて制約付きトポロジーと経路が得られる。全ノードが同時刻に同じ情報を持ったこと、FIB に同じ経路を入れたこと、同じパケットを運んだことは別途確認しなければならない。

閾値の揺れがルーティングの揺れになる

測定値が一つの閾値付近を往復すると、逆方向グループの設定と解除も往復する。そのたびに LSP/LSA のフラッディングと再計算が起こり得る。RFC 9917 はこの危険を挙げ、設定値と解除値を分ける例を示し、通常のスロットリングで更新頻度を抑えられると説明する。

ヒステリシスや抑制は安定性の道具であって、真偽判定ではない。解除条件を厳しくすれば回復後も除外が残り、設定条件を高くすれば劣化を長く許す。広告を遅らせれば移行中のデータベース版がノード間でずれる。どれも運用上の選択肢だが、最終的な色だけでなく選択した条件を残す必要がある。

時系列には、受信側で閾値を越えた時刻、EAG を変更した時刻、各リンク状態版の生成と受信、再計算、FIB 変更、サービス観測を別々に置くべきだ。「切替時刻」一つにまとめると、原因究明に必要な遅延が消える。

規則の順番が相互運用性を守る

RFC 9350 が基本の計算手順を定め、RFC 9843 が帯域と遅延の制約を加えた。RFC 9917 は逆方向グループの規則をさらに加え、IANA に「IGP Flex-Algorithm Path Computation Rules」レジストリを設けた。

専門家レビューを経た新規則は、必要な位置に挿入できる。ただし既存規則同士の相対順序は変えられず、既存規則を削除、統合、反復してはならない。同じ FAD を異なる順で枝刈りすれば、実装間で適格グラフがずれる可能性があるためだ。

レジストリが示すのは共有ルールの現状であり、特定ルーターの実装や実行ではない。対応機能、設定、受信 FAD、計算トレース、FIB は個別に証明する。

証拠はパケットまでつなぐ

監査の鎖は、受信カウンター → 閾値と期間の判定 → 逆方向 EAG → LSP/LSA 版 → winning FAD → 順序付き枝刈り → ローカルトポロジー → 計算経路 → FIB → 観測パケット → サービス結果、となる。矢印ごとに担当者と時刻が違う。

この分離により、色を軽視する誤りと過大評価する誤りの両方を避けられる。色は合意された計算から辺を除くので、単なる注釈ではない。一方、測定とポリシーから生成された中間記録であり、物理状態やサービス成果の最終判定でもない。

出典