要約
- RFC 9574 は、複製能力の低いEVPNリーフから、より強い補助レプリケータへブロードキャスト/マルチキャストの展開を委ねる。
- Replicator-AR経路が示すのは役割と到達先であり、リーフのRegular-IR経路や選択集合が相手に設定済みであることではない。
- 既定3秒のアクティベーションタイマー中は通常のingress replicationを使い続ける。この時間は余裕であって、完了を観測する受領証ではない。
再起動した装置に最初の一包を渡す前に
レプリケータが再起動し、Replicator-AR経路を再び広告した。BGP上は到達可能で、AR-IPも得られた。だが、その瞬間にリーフから最初のBMパケットを送ると、レプリケータ側にはそのリーフを含む状態がまだないかもしれない。
そこでRFC 9574は、リーフにアクティベーションタイマーを設けることを推奨する。既定値は3秒で、設定変更できる。その間、リーフは通常のingress replicationを利用する。待つ対象は、リーフのRegular-IR経路がレプリケータへ届き、そこでプログラムされる過程である。
この規定は重要な証跡の分離を行う。経路の再出現は候補の再発見であり、メンバー状態の回復ではない。時計が満了したことも、後者を直接観測したわけではない。
コピーの仕事は消えず、集約される
通常のingress replicationはunderlayのPIM状態を不要にする一方、同じ物理リンクへ同一フレームを複数回送ることがある。PIMはリンク上のコピーを減らすが、fabricにマルチキャスト状態を持たせる。Assisted Replicationは複製処理をAR-REPLICATORへ集約する。
AR-LEAFは一つのブロードキャスト/マルチキャストコピーを送り、レプリケータが他のリーフ、レプリケータ、ローカル回線へ展開する。リーフの負担は下がるが、レプリケータの帯域、状態、障害半径は増える。これは状態削除ではなく配置変更である。
未知ユニキャストはARの対象外で、既知ユニキャストと同じ経路を進む。PFLのUフラグは別の最適化だ。BUMという一語から三種類すべてに同じ結果を推論してはならない。
外側アドレスが処理を選ぶ
AR-IP宛てのパケットは、overlayから受けたトラフィックを別のoverlayへ複製し得るAR処理を選ぶ。IR-IP宛てなら通常のingress replicationとしてローカルへ配信し、overlayへ再複製しない。単一IP構成ではAR-VNIとIR-VNIがこの区別を担う。
したがってアドレスは単なる所在ではない。送信元、宛先、VNI、選択リーフ集合への所属が、再複製、ローカル配信、送信元への戻り抑止を決める。経路の存在だけでは、実パケットがどの分岐を通ったか分からない。
必要なのは、制御プレーンの値と転送表の読取り、集合の版、既知シーケンスのcanaryを結びつけた検証である。
フォールバックは例外処理ではない
非選択モードでは、各リーフが一つまたは複数のレプリケータをローカルに選べる。全候補が停止した、役割を失った、または一度も発見されなかった場合、リーフは通常のingress replicationへ戻らなければならない。
選択モードでは、リーフはBDごとに一台を選び、対象レプリケータ向けのLeaf A-D経路を広告する。レプリケータはそれを材料に選択リーフ集合を作る。障害時には別のレプリケータを選び、新しいLeaf A-Dを出し、アクティベーション期間は通常複製へ戻すことが推奨される。
この戻り道は状態移行中の継続性を支える。ただしAR-LEAFは複製性能が低いことが多い。フォールバックが設定されている証跡と、負荷に耐えられる証跡は別に必要である。
同じ3秒でも待っている事実が違う
選択モードにはjoin-waitタイマーもあり、既定は3秒である。こちらは複数のReplicator-AR経路を集めてからLeaf A-Dで選択を表明するために待つ。アクティベーションタイマーは、選択後に相手側のプログラミングを待つ。
前者は候補集合、後者は転送準備という異なる不確実性を扱う。どちらもFIBの完了通知ではない。固定時間を「収束済み」と読み替えると、標準が残した境界を消してしまう。
実運用では、再起動、ポリシー変更、制御プレーン高負荷を含む伝播・プログラミング時間の分布を測り、平均ではなく長い尾に合わせるべきである。
モードの不一致は配信対象を消す
選択レプリケータはL=1を広告する。一台でもL=0を広告すれば、他のレプリケータも非選択モードへフォールバックしなければならない。リーフ側も一つのBD内で選択/非選択を混在させるべきではない。
混在した場合、非選択リーフのトラフィックが選択レプリケータへ届いても、そのレプリケータの集合にいない別リーフへは送られない可能性がある。パケット形式も経路も正しく見えるまま、受信者だけが抜け落ちる。
Replicator-AR経路が取り消されると対応するLeaf A-Dも取り消される。それは意図の撤回であって、古い集合が全装置から消えたことや移行中の無損失を証明しない。
脅威の記述を事故へ膨らませない
RFC 9574は、レプリケータへの攻撃や性能不足、誤実装によるループ、モード混在による重複、PFL誤設定による必要トラフィックの欠落を論じる。送信元IPを保持してsplit horizonを成立させる場合のuRPFとの交換条件も示す。
これは観測済み事件の報告ではない。特定ベンダーの欠陥、実測3秒収束、テナント損失、普及率を資料から作り出してはならない。確かな結論は、役割広告の後に検証すべき実行状態が残るという点までである。
出典
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9574.html
- https://www.rfc-editor.org/info/rfc9574/
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9574.txt
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9574.xml
- https://datatracker.ietf.org/doc/rfc9574/
- https://datatracker.ietf.org/doc/rfc9574/history/
- https://www.rfc-editor.org/errata/rfc9574
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc7432.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc8365.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc6514.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9572.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc7902.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc7348.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc7637.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9161.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc6513.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc4023.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc2119.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc8174.html
- https://heng.lu/running-code-primary-the-patch-needed-to-preserve-the-internet-original-design/
- https://heng.lu/minimum-initial-specification-localized-future-decision-voluntary-adoption-internet-coordination-system/
- https://heng.lu/on-why-btw-media-exists-and-why-reality-not-advocacy-is-the-product/
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