要約
- ピア側の EAP 鍵が期限内でも、認証装置は再起動やメモリ回収で同じエントリを既に失っている場合がある。
- RFC 5247 が求めるのは現在の共同状態を保護された形で同期する仕組みであり、共通鍵が残っていなければ完全な再認証に戻ることである。
残り七分という表示の盲点
移動端末は前回の認証状態を保存していた。画面には「残り七分」と出ている。接続先の認証装置は直前に再起動し、揮発性キャッシュを失っていた。端末は短縮された再利用を始めたが、相手は指定された鍵を見つけられない。
この時、端末の時計が壊れていたとは限らない。認証装置が規則に違反したとも限らない。期限は、存在する状態をいつまで利用できるかという各ノードの判断である。別ノードに保存を義務づけるものではない。
RFC 5247 は、この非対称性を安全関連プロトコルの要件として扱う。ピアまたは認証装置は、再起動や資源回収によってキャッシュの一部または全部を消し得る。そのため鍵寿命を協議しても同期は保証されず、ピアは実際に利用を試みるまで、認証装置に鍵が残っているか分からないことがある。
一つの「有効」表示に二つのメモリを代弁させてはいけない。
短縮しても工程は消えない
EAP の鍵管理には複数の場面がある。ピアと EAP サーバーがメソッドを実行し、MSK や EMSK を導出する。AAA が鍵材料や認可属性を認証装置へ運ぶ。さらにピアと認証装置が安全関連プロトコルを実行し、使用する文脈を選び、所持を証明し、通信を保護する一時セッション鍵を作る。
キャッシュは過去の成果を保存し、一部の工程を繰り返さずに済ませる。しかし現在の二者が同じ状態を持つという証明までは保存できない。再利用の瞬間に、双方が同じ鍵を選び、所持を示し、新しいセッション鍵を導出できなければならない。
ローカルのヒットは「私は持っている」としか言わない。保護された交換の成功が初めて「私たちは今も共有している」と言える。
鍵名は入口であって結論ではない
同じ種別の鍵が複数残る場合、ピアと認証装置は別々の正しいエントリを選んでしまう可能性がある。RFC 5247 は、所持証明に用いる鍵を安全関連プロトコルが明示的に命名するよう求める。
名前は候補を特定する。名前そのものが秘密の所持を証明するわけではない。その後の交換で、双方が対応する材料を持つことを示す。キャッシュを許す下位層では、過去の EAP 材料から同じ通信鍵を再利用しないよう、nonce やカウンターを混ぜて新しい TSK を作る必要もある。
従って運用証跡は、鍵名、各側のヒット、共同所持証明、鮮度入力、TSK 導出、活性化、最初の保護パケットという順で残すべきだ。どこかで止まった時、それより後の結果を推定しない。
同期要求にも認証が要る
片側だけが忘れたなら、残っている側からコピーすればよいように見える。しかし鍵キャッシュを書き換える命令は権限のある操作である。失われた鍵の存在を、無保護の自己申告で復活させてはならない。
RFC は、安全関連プロトコルまたは下位層の通知による鍵状態の再同期を推奨する。双方に交換を保護できる共通鍵がまだあれば、それを根拠に現在の状態を合わせられる。共通鍵が残っていなければ、安全な同期は成立しない。
その場合の道は再認証である。タイマー後に EAP を開始するなど、長い経路へ戻り、身元、方針、鍵材料を改めて確立する。これは性能上の後退でも、権限上は前進である。根拠を失った修復要求に権限を貸さないからだ。
範囲の不一致は保持の不一致とは違う
双方が同じ鍵バイトを保持していても、利用可能な範囲が一致するとは限らない。RFC 5247 は、ピアと認証装置が互いのキャッシュ範囲を判断し、利用制限を協議できる仕組みも推奨する。
ある認証装置、ポート、サービス集合、またはトラフィックプロファイル向けの状態が、期限内というだけで別の場所に拡張されることはない。移動後の AAA 経路が別の EAP サーバーを選ぶこともある。同じ realm のサーバーが同じ資格情報を検証できても、持続状態まで共有しているとは限らない。
従って再利用失敗の原因候補には、消失、鍵選択、範囲、バックエンド選択、方針変更がある。観測なしに資格情報の誤りや攻撃へ短絡すべきではない。
「認証失敗」に丸めない
サポート画面が成功と失敗しか持たないと、キャッシュの不一致が利用者の責任に変換される。パスワード変更、アカウントロック、誤った侵害調査が始まり、根本の再起動や資源圧力は見逃される。
最初に閉じなかった境界を記録する方がよい。鍵名が不明だったのか、相手に文脈がなかったのか、所持証明が失敗したのか、新しい TSK を作れなかったのか、活性化やアクセス方針で止まったのか。保護通信が成立してもサービス応答がなければ、それも別の状態である。
原因がまだ分からないなら「不明」を残す。RFC が示すのは非同期が起こり得るという設計事実であり、現実の一件に原因を割り当てる証拠ではない。
片側だけ消す試験
両側を同時に再起動する試験では、危険な分岐を見られない。必要なのは、双方保持、ピアのみ保持、認証装置のみ保持、双方消失の四条件である。どの条件でも再試行は有限で、完全認証への移行が見え、古い TSK が再活性化しないことを確認する。
大量再起動やメモリ圧力も試す。平常時のキャッシュは完全認証の負荷を減らす。だからこそ一斉消失時には、多数の端末が同時に高コスト経路へ戻る。ヒット率だけで容量を決めたシステムは、状態再建の瞬間に飽和する。
見るべき数字はキャッシュ件数だけではない。安全な miss を一秒に何件復旧できるか、再認証の待ち時間はどこまで伸びるか、最終的に利用可能な通信が戻ったかである。
Sources
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