要約
- RFC 3346 が示した MPLS-TE の適所は、IGP の最短経路に集中した特定トラフィックを、制約付きの明示的 LSP へ移すことだった。
- 同時に、設定帯域、経路計算、シグナリング受理を、実需要、物理容量、サービス結果の証拠と混同してはならないとした。
IGP のメトリックを変えれば混雑を避けられることはある。しかし、その変更は多数の宛先を一斉に動かし、どの負荷がどこへ移るかを粗くしか制御できない。MPLS なら、入口と出口を持つトラフィック集合に対し、要求帯域、優先度、リンク affinity、除外ノード、耐障害条件を与え、通常の最短経路とは異なる LSP を選べる。経路選択が運用者の明示的な判断になる。
2002 年 8 月の RFC 3346 は Informational であり、新しい転送プロトコルを定義した文書ではない。MPLS アーキテクチャ、RSVP-TE、IGP 拡張がそろいつつある時期に、それらが運用現場で何に適用でき、どこで限界に達するかを整理した。局所的なホットスポットの回避、並行回線への負荷配分、地域内トラフィックを海底回線から外す affinity、障害後の再最適化が例に挙げられた。
ただし、混雑には二種類ある。RFC 2702 は、そもそも資源が需要に足りない場合と、十分な資源があるのに配置が悪い場合を分けた。後者ならトラフィックエンジニアリングが効く。前者には増強か需要制御が必要である。空いている別経路があるなら LSP は負荷を移せる。全経路が不足しているなら、ラベルは不足の発生場所を変えるだけで、帯域を増やさない。
この境界を最もよく表すのが LSP の bandwidth parameter である。制約付き経路計算や RSVP-TE の admission はその数値を参照できる。だが RFC 3346 は、その値が LSP 上の実トラフィックを正確に表さない場合があると警告した。ピーク値、パーセンタイル、別の統計値のどれを選ぶかは運用判断である。イベント時の増加を見込んでオーバーサブスクリプションや物理リンクの過少申告を選ぶこともある。数値は将来を観測した事実ではなく、測定結果から作った仮説だ。
設定した帯域は policing とも異なる。制限されていないフローは割当量を超え、他のフローに影響し得る。RFC は policing を独立した選択として扱い、例外を除けばコアよりエッジで行う方が慎重だと述べる。設定ファイルに帯域を書いても、その瞬間にパケットへ強制力が生まれるわけではない。
そこで測定が制御ループへ戻る。実測ワークロードからオフラインで明示経路を作る方法も、オンラインで帯域、優先度、affinity を変える方法もある。傾向は LSP の再設定時期を示し、異常な変動は需要急増、設備故障、回線増設の遅延、またはモデルの陳腐化を疑う契機になる。LSP が up であることと、期待量を運び、許容遅延を守っていることは同じではない。
証拠は順番に読む必要がある。測定サンプル、採用した統計モデル、設定値、経路計算、各ノードの admission、転送状態、実際に通ったパケット、サービス結果は別々である。サンプルは適切なパーセンタイルを自動的に選ばない。計算成功は予約成功ではなく、予約成功はハードウェア転送を証明せず、パケット観測だけではアプリケーションの成否まで分からない。
障害時には差がさらに広がる。RFC 3346 は、残存トポロジー上での再最適化を、瞬間的な損失を減らす fast reroute の補完とした。事前に迂回 LSP が存在すること、障害時に実際に切り替わること、後から全体が再計算されること、元と同等の安定状態に戻ることは別の出来事である。RFC 4090 が局所修復を標準化しても、バックアップの存在だけで帯域保護やサービス回復を断言できない。
粒度を高めれば状態が増える。多数の LSP は細かな移動を可能にするが、エッジノードのフルメッシュはおおむねノード数の二乗で増える。階層化や地域化は規模を抑える一方、制御を粗くする。逆に集約し過ぎれば、一つのトランクが大きすぎて制約を満たす経路が見つからない。複数の並行 LSP に分割すれば通せる場合があるが、状態と障害パターンは増える。
RFC は当時の管理ツールにも触れた。2002 年には MPLS 固有の性能・障害管理、とりわけ根本原因分析を十分に扱う市販 NMS が少なく、初期導入者が自前で作る例があったという。これは現在の製品評価ではない。重要なのは、TE データベース、ルーティング情報、シグナリング、測定、設定自動化を加えるほど、説明可能性と観測能力も必要になる点だ。
文書の結論は明快である。MPLS-TE は容量不足や計画不足の万能薬ではない。ホットスポットを避けるために経路を延ばせば遅延が増えることもある。成長期に時間を稼げても、需要を物理トポロジーへ写像できない状態は解消しない。どの技術を使っても、増強を実行しなければ最終的に混雑する。
その後、OSPF と IS-IS の TE 属性、RSVP-TE、PCE、stateful PCE が制御面の知識と選択肢を拡大した。それでも、データベース上の可用帯域は物理容量そのものではない。より高度な計算にも、正しい入力、実行、転送観測、十分な設備が必要である。
会員向け解説
プロフィールの詳細
適切な会員レベルでログインすると、解説全文と出典メモをご覧いただけます。
Strategic Circle 限定
Strategic Circle
すべての読者に公開されています。参加してログインすると プロフィール解説 を閲覧できます。
Strategic Circle に参加Leadership Alliance 会員限定
Leadership Alliance
対象となる IP 資産の所有者・管理者向けです。ログインすると Leadership Alliance の解説を閲覧できます。
Leadership Alliance に参加
