要約
- RFC 2333のNHRPは、経路制御が選んだ方向に対してNBMAアドレスを解決する仕組みであり、ルーティングプロトコルでも疎通試験でもなかった。
- ショートカットを使う判断は、トポロジー、確立コスト、アプリケーション要件、NHRP対応範囲、ループ安全性に依存した。
- 登録ACK、権威あるResolution Reply、キャッシュエントリーは、出所・ポリシー・保持時間を伴う別々の制御面証拠である。
- ATMでは、アドレス解決後に仮想回線の確立が残り、その後もIP転送、復路、遠隔サービス、アプリケーション結果を別に確認する必要があった。
- 運用判断は、経路、適用判断、マッピング、接続、データ面、サービス、アプリの順に証拠を積み上げなければならない。
一行のキャッシュが語れる範囲
NHRPの状態は、簡潔であるほど強く見える。
IPアドレスとNBMAアドレスが対応し、エントリーが有効で、サーバーが権威ある応答を返している。ここまでそろうと、画面上では問題が終わったように見える。
しかしRFC 2333は、NHRPのパケット形式ではなく適用可能性を論じた文書だった。問われたのは、どのようなNBMA環境でショートカット解決を使う意味があり、どこで使うべきでないかである。
適用可能であることは、要求が送信されたことを意味しない。正しい応答は、ATMのSVCが成立したことを意味しない。SVCの成立は、IPパケットの往復や遠隔アプリケーションの完了を意味しない。
キャッシュは次の操作を可能にする情報であって、後続操作の実績ではなかった。
NHRPより先に経路が選ばれる
RFC 2333はNHRPをルーティングプロトコルとして扱わない。
送信元は通常のネットワーク層ルーティングで宛先への次ホップを決める。その経路がNBMAインターフェースを通り、必要な解決情報がなければ、NHRP Resolution Requestを送る。同じ論理NBMAネットワーク上の宛先なら宛先自身のNBMAアドレスを、外部宛先なら現在の出口ルーターのアドレスを得られる。
動的ルーティングを利用する場合、NHRPが示す出口はルーティングの選択を反映する。
それは、その出口があらゆる意味で最良という証明ではない。元の経路のホップ数を減らしても、遅延、混雑、価格、障害分離まで最適とは限らない。また、NHRP応答は選択に使われた経路情報を認証しない。
経路のメトリックが変われば、マッピングの前提も変わる。短時間に経路が揺れると、ショートカットは短命になり、ルーター間ではループ抑止に必要な情報を失う危険もある。
アドレス解決は、ある時点の経路判断を利用する。判断そのものを固定する権限は持たない。
ショートカットには費用がある
Classical IP over ATMでは、LISの内側でATMARPを使い、異なるLIS間はIPルーターを通過した。同じATM基盤に直接回線を張れる場合でも、論理的なサブネット境界が転送経路を決めた。
NHRPはこの制約を広げ、同一の論理NBMAネットワーク内でLISを越えるマッピングを解決できた。余計なIPホップを減らし、媒体固有のQoSを利用できる可能性もあった。
ただし、可能なショートカットをすべて作るのが正解ではない。
接続型ネットワークでは、シグナリング、NIC資源、スイッチ状態、保持コストが発生する。短い通信や特別なQoSを必要としない処理では、通常経路のまま終える方が合理的なこともある。
RFC 2333が適用判断をアプリケーション要件と結び付けたのは、このためである。NHRPを利用できる環境と、このフローで今ショートカットを作る決定は別だった。
誰が開始するかも制御面の一部
ショートカットができる前に、パケットは複数のルーターを通ることがある。各地点が同じ通信に反応すると、重複したショートカットが作られうる。
文書は、要求を開始する主体を、NBMAインターフェースを持つ送信元ホスト、次ホップがそのNBMAインターフェースから届く最初のルーター、または必須のポリシールーターに絞る運用則を示した。
これは成功条件ではなく、状態を作る権限の配分だった。
開始点を限定することで、同じパケット列に対する回線とキャッシュの増殖を防ぎ、どのポリシー地点を維持するかを明確にできる。NHRPは単なる検索ではなく、下位層の資源を消費する判断につながるからである。
ルーター間通信が境界を露出した
ホスト同士、ホストからルーター、ルーターからホストは基本的な適用例だった。ルーターからルーターでは、より厳しい条件が現れた。
基礎的なNHRPだけでは、ルーティングが持つループ抑止情報を完全に保存できない場合がある。自律システム境界をまたぐメトリック変更などにより、永続的な転送ループが生じる可能性が指摘された。
安全な特例は、宛先ホストが出口ルーターの非NBMA側に安定して直接隣接する場合だった。ルーター要求を示すQ bitが立っていても、この条件を満たさなければ、出口はNAKを返して通常経路を使わせられる。
NAKはネットワーク障害とは限らない。安全性を証明できない最適化を拒否し、既存の経路を守る判断である。
登録の受理は生存確認ではない
RFC 2332では、NHCが自分のプロトコルアドレスとNBMAアドレスをNHSに登録する。
NHSは誤りとポリシーを確認し、サービス対象外、資源不足、管理上の禁止、ユニークアドレスの競合などで拒否できる。成功したRegistration Replyは、サーバーがその時点でマッピングを受理したことを示す。
そのACKは、遠隔アプリケーションを問い合わせた結果ではない。エンドツーエンド回線を張った結果でも、全NHSへの同期完了でもない。
登録にはHolding Timeがあり、クライアントは損失を考慮しながら期限前に更新を繰り返す必要がある。更新されなければエントリーは失われる。
受理されたという事実と、現在も端点が稼働しているという事実は分けなければならない。
権威の対象はマッピングだった
RFC 2332は、権威ある応答と非権威のキャッシュ応答を区別した。
クライアントは宛先を担当するNHSからの応答を求められる。中継NHSも、許可される場合にはキャッシュ情報から返答できる。この区別により、誰がどの関係に基づいて答えたかを評価できる。
しかし、権威ある応答でも対象はアドレス対応に限られる。
ATMシグナリングがSVCを受け入れるか、必要帯域があるか、アドレススクリーニングや閉域設定が通信を許すか、復路が成立するかまでは答えない。
「権威あり」を「到達保証」と読み替えると、応答者が観測していない層まで知っていることになってしまう。
キャッシュには異なる由来が同居する
NHSのキャッシュは、登録、Resolution Request/Reply、事前設定、ARP、RFC外の仕組みから作られうる。NHC側も応答、手動設定、外部機構から情報を得られる。
存在だけを表示する監視は、この違いを消す。
RFC 2677は、キャッシュ種別、用途、Holding Timeの有効性、残り時間、交渉済みMTUなどを管理対象として表した。学習した行は残り時間がゼロになれば削除される。一方、管理者設定の行は不揮発設定に支えられるため、保持時間が未定義の場合がある。
同じアドレス対でも、新しい権威応答、同期された複製、手動設定、負の応答キャッシュでは意味が違う。
キャッシュは出所を持つ主張の集合であり、パケット観測の一覧ではない。
同期は外部の現実を再測定しない
SCSPとRFC 2335の分散NHRPサービスは、複数のNHS間で情報を同期する問題に取り組んだ。
サーバーごとの食い違いを減らし、どこに要求が届いても同じ基盤情報から答えられることは重要だった。
しかし、複製は端点を新たに確認しない。
古い元情報を正確に配布すれば、複数サーバーが同じ古さを共有する。そこで証明されるのは同期動作であり、現在の転送ではない。
RFC 2332がPurge、ループ検出、プロトコルアドレス到達不能、不正応答、認証失敗、ホップ超過を定義したのは、状態を取り消し可能に保つためだった。
解決の次に接続が始まる
接続型NBMAでは、解決した後に回線確立が残る。
ATMの送信元は、得られたNBMAアドレスに対して希望帯域を持つ接続を設定する場合がある。無接続媒体ならすぐ送信できるが、それでも解決結果が配送結果になるわけではない。
回線設定は資源やポリシーで失敗できる。成立してもIP転送や復路が壊れている可能性がある。パケットが通っても遠隔サービスや認証、処理結果は別である。
“resolved”と“connected”の間には、仕様が意図的に残した境界があった。
通常経路は継続性を守る
データパケットが解決を促したとき、送信元はそのパケットを破棄、保持、または通常経路へ転送できた。RFC 2332は、解決中も通信が続く可能性があるため、通常経路への転送を既定として推奨した。
また、NHRP非対応ルーターに要求が届けば、要求は黙って捨てられることがある。ショートカットはできなくても、ホップ単位の接続性は残りうる。
この設計では、最適化の不成立とサービス停止が同義ではない。
逆に、NHRP状態が正常でもアプリケーション停止はありうる。監視はその両方を同時に表現できなければならない。
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