要約

  • フランスの事故調査機関BEA-RIは、火災がSBG2の1階にあるバッテリーと無停電電源装置(UPS/インバーター)を収めた「エネルギー室」で始まったと認定した。これらの室には火災検知はあったが、自動消火設備はなかった。
  • 調査報告の時系列とOVHcloud自身の説明は、出火時刻で約12分ずれている。報告は決定的な原因を特定せず、判断を司法鑑定に委ねた。
  • 独立計測では、ピーク時に約46万4,000ドメイン・約360万ウェブサイトが停止した。OVHcloudは約12万サービスが影響を受けたと報告した。
  • リール商業裁判所は2023年、本番データと同じSBG2の建物にバックアップを保管していた2社に計25万ユーロの支払いを命じた。約束されたバックアップは提供されなかったと認定された一方、防火に関する過失請求は退けられた。
  • OVHcloudが宣言した再建と冗長化の変更が実効的かどうかを示す独立の公表資料は、確認できた範囲では存在しない。

検知は機能し、消火は機能しなかった

2021年3月10日の火災で最も重要な事実は、煙が検知されなかったことではない。検知され、しかも初期段階で検知されたにもかかわらず、建物を失ったことである。BEA-RI(工業リスク調査分析局、生態移行省所管)は2022年5月24日、調査報告MTE-BEARI-2022-005を公表した。その報告は、火災がSBG2の1階、バッテリーとUPS(インバーター)を収める区画で始まったと記述する。同報告の表現によれば、これらの「エネルギー室」は火災検知を備えていたが、自動消火システムを一切持っていなかった。そして、出火はバッテリー上とインバーター上でほぼ同時に発生した(BEA-RI報告書の公開版、照合可能な複製)。

つまり、防御線は二重に破れている。第一に、エネルギー室では検知は警報を鳴らすが、消火は人の到着と手作業に依存していた。第二に、燃焼が始まった時点で、その区画から電源を落とすまでに時間がかかる設計だった。火災は機器室に閉じ込められず、建物全体の帰趨を決めた。

二つの時系列

事故調査の記録は、当日の順序を分単位で残している。サイト警備室の最初の警報は00:35。警備員が00:37にSBG2の1階エネルギー室2に到達し、濃い黒煙を確認した。00:39に建物を退避。00:42に消防(SIS)へ通報。最初の消防隊到着は00:59。SBG2の非常電源を遮断したのは01:13、SBG1・SBG3・SBG4の電源遮断は01:28だった。消火は10:02、活動終了は18:13。泡消火剤は約4,000リットルが使われた(BEA-RI報告書の公開版、照合可能な複製)。

OVHcloudの説明はこれと一致しない。同社が当日に顧客向けコミュニティへ出した最初の告知と、コーポレートのニュースルーム更新は、出火を00:47とし、煙が検知されたエネルギー室で検知システムが即座に作動し、手順に沿った対応が取られたと述べている。同社はまた、火災対応はサイト全体、すなわち4つのデータセンターすべての電源を落とした後でなければ進められなかったと説明した(OVHcloudコミュニティ告知、OVHcloudニュースルーム、BEA-RI報告書の公開版)。

この約12分の差は、単なる記録の不一致ではない。00:35に警報が鳴ったという公式記録は、検知能力そのものは機能していたことを意味する。問題は、検知のあとに何ができたか、そしてできなかったかである。どちらの説明も、自動消火設備がなかったという事実を打ち消さない。公表された資料で照合できる限り、この二つの時系列は統合されていない。読者は両方を並べて読むほかない。

消火より先に必要だった電源遮断

BEA-RIの報告は、SBG2の損傷だけでなくSBG1の部分損傷(12室中4室)と、SBG3へつながる建物間リンクの被害も記録した。負傷者・死者は記録されていない。注目すべきは、報告が決定的な原因を明示的に認定せず、それを司法鑑定に委ねたことである。そのうえで、自動消火システム、バッテリーの保守、建物設計、電源遮断を含む緊急時計画という4点で安全上の教訓を示した(BEA-RI報告書の公開版、照合可能な複製、報告書の所見に関する報道)。

ここで確認できるのは、原因ではなく条件である。火災が始まった区画には消火の自動手段がなく、電源遮断は手順として存在しても、実行されるまでに時間を要した。施設設計と緊急時計画が、被害の大きさを左右する要素として公式に記録された。

湿度の観測という未解決点

調査報告をめぐる報道は、火災の前に電力用インバーター付近で水または湿度が観測されていたという所見に触れている。ただし報告書自体は、その湿度の読み取りが測定エラーであったかどうかを解決していない。これは報告された観測であり、確定した原因ではない。記事で扱う際も、因果の説明としてではなく、未解決の論点として提示されなければならない(報告書の所見に関する報道、BEA-RI報告書の公開版)。

外部計測が示した停止規模

影響はフランス国内の顧客に限定されなかった。独立系のインターネット計測企業Netcraftは、ピーク時に約46万4,000のドメインにまたがる約360万ウェブサイトがオフラインになったと推計した。2021年3月10日の06:00〜07:15(UTC)には、OVHcloudに帰属するIPアドレスの18%超が応答しなかった。影響を受けたのはオンラインバンク、ウェブメール、ニュースサイト、オンラインショップ、複数の政府系ウェブサイトだった(Netcraftの分析、ロイターの当日報道)。

同日の報道は、火災がフランスの主要なクラウド事業者のサーバー群を破壊したことを伝えている(ロイターの関連報道)。政府系サイトを含む停止は、可用性が民間契約の問題にとどまらないことを示す。公共部門の継続性は、一つの事業者の設計判断に事実上依存していた。

補償という名の事後処理

OVHcloudは影響を受けたサービス数を約12万と推計し、そのうち約11万3,000が更新時点で完全に復旧したと述べた。代替手段として他データセンターへ納入したベアメタルサーバーは14,472台、復旧したVPSは30,775台で、約5,900台が残っていた。同社は影響を受けたSBGサービスの課金を停止し、該当顧客向けに無償措置を採った(OVHcloudニュースルーム)。

補償は段階制だった。破壊されたVPSについて、ディザスタリカバリ(DR)がない場合は6か月分の補償、DRがある場合は再構築、または再構築が不可能な場合の全額返金に3年間の無償サービスが提示された(補償計画に関する報道)。ここで注意すべきは、これらがすべて事業者側の集計値であり、確定した監査済みの数値ではないことだ。更新時点も明示されていない。

火災当日の同社の説明は、ストラスブール拠点がSeveso指令上の施設に分類されていなかったこと、消防が02:54に敷地と周辺を隔離したこと、04:09の時点でSBG2は焼失しなお隣接データセンターへのリスクが残っていたこと、05:30以降は県の指揮のもとで同社チームが敷地に立ち入れなかったことを伝えている(OVHcloudコミュニティ告知、当日の業界報道)。同社は当初、原因と影響について透明に説明する姿勢を示し、当局と保険会社が時系列・出火・延焼の調査を続けていると述べた(OVHcloudコミュニティ告知、OVHcloudニュースルーム)。

裁判所が認定した「届けられなかったバックアップ」

リール・メトロポール商業裁判所は2023年、OVHcloudに対し、Bati Courtageへ10万ユーロ(2023年2月3日決定)、Bluepadへ15万ユーロ(2023年3月16日決定)、合計25万ユーロの支払いを命じた。理由は、両社が購入した有償バックアップサービスが、本番データと同じSBG2の建物内にバックアップを保管していたため、同じ火災で両方のコピーが失われたことにある。裁判所は、約束されたバックアップサービスが提供されていなかったと認定した一方、防火に関する過失請求は退けた(Data Center Dynamicsの報道、Blocks & Filesの報道)。

この認定は、技術的な冗長性と契約上の冗長性が同一ではないことを示す。顧客が購入したのは「バックアップ」という名称であり、地理的に独立したコピーではなかった可能性がある。ここで注意が必要なのは、判決文そのものを直接確認したのではなく、業界報道を通じて把握している点である。金額・理由・控訴の状況は報道に帰属させるべきである。同じ報道は、OVHcloudがBluepad判決について控訴する意向を示したことも伝えている。控訴の帰結は、一次記録が得られない限り未解決として扱う(Blocks & Filesの報道)。

まだ検証されていない修復

最も検証が難しいのは、この事案の「その後」である。再建され再設計された容量、変更されたバックアップ構成、公表された調査結果、規制当局の措置、その後の停止やデータ損失の開示——これらを独立に確認できる一次資料は、確認できた範囲では見つかっていない。事業者の発表は、検証ではなく宣言である。

したがって、この事案から引き出せる確実な結論は限定的である。2021年3月10日、OVHcloudのストラスブール拠点でSBG2が焼失し、SBG1が部分的に損傷した。公式調査は、バッテリーとUPSを収める区画に自動消火設備がなかったこと、電源遮断が遅れたことを記録し、原因の認定は司法鑑定に委ねた。独立計測は大規模な停止を記録し、フランスの商業裁判所は、本番と同じ建物にバックアップを置いていた2社への損害を認定した。冗長性が実際にどこまで届いていたのかという問いは、依然として開かれている。