要約
draft-ietf-ipsecme-encrypted-esp-ping-03は、確立済み ESP SA 上で認証付き Echo を交換し、必要なら戻り側 SPI を要求する提案である。- 同一 Traffic Selector の並列 SA があり得るため、成功応答が証明するのは要求が出た SA と応答が実際に戻った SAだけである。
- タイムアウトの判断には、応答能力の交渉、資源制約、認証済み受信カウンタ、要求/実際の SPI、通常通信の結果が必要になる。
主系と予備系に同じセレクタが設定されている。監視は主系 SPI から Echo を送り、予備系 SPI で返すよう要求した。応答は届いたが、受信 SPI は要求値ではなく主系側だった。暗号検証は成功している。それでも予備系は未検証のままだ。
Datatracker の現行記録と履歴では、公開中の文書は 2026 年5月4日の第03版である。提出一覧には9月28日の第04版があるが、状態は uploaded にとどまる。本稿が扱う03版は Standards Track の作業中 Internet-Draft で、RFC、実装、導入実績ではない。
要求は確立済み SA 上の ESP パケットとして送られる。一つのモードは USE_AGGFRAG の輻輳制御 payload を再利用し、もう一つは IKE_AUTH で ENCRYPTED_PING_SUPPORTED を交渉する。AGGFRAG の IANA 表とIKEv2 Notify 表には、提案名はまだ登録されていない。
専用 payload は要求 ID、Echo シーケンス、長さ、任意データ、任意の戻り SPI を持つ。Echo シーケンスは ESP の SA シーケンスとは別物である。戻り SPI も命令ではない。開始側は同じ peer の SADB に存在するかを調べ、応答側も自分の policy で検証する。不一致なら要求 SPI を使わず、要求が到着した SA で返してよい。使用可能でも最終判断は応答側にあり、開始側は要求値と実測値の差を報告すべきだとされる。
この区別は RFC 4301 の構造に沿う。SA は simplex、すなわち一方向であり、双方向には一組が要る。同じ selector を持つ複数 SA も必要で、どれに通信を配るかは送信側の局所判断である。従って「同じ VPN」「同じセレクタ」は同じ SPI や物理経路を意味しない。
RFC 4303に基づく SPI/SAD 検索と認証に成功した応答は、一つの保護パケットについて強い証拠になる。しかし通常パケットは SPD が PROTECT、DISCARD、BYPASS を選ぶ。03版の Echo は通常の Security Policy に一致しなくても受理される診断用例外である。その成功から、内側のアドレス、ポート、プロトコルを持つ業務通信が同じ処理を受けたとは言えない。
RFC 9347の AGGFRAG も一方向 SA を使い、内側 IP の信頼できる配達やパケットごとの ACK を提供しない。小さな Echo が通っても、大きな業務パケットの MTU、断片化、復号後 policy、アプリ受領は残る。
無応答も一義的ではない。能力を交渉した peer は応答を約束するため、沈黙の情報量は増える。ただし03版はローカル資源制約を残し、timeout を故障の「兆候」とする。同時に、認証済み受信 packet/byte counter を確認し、Echo だけを理由に busy な接続を破棄しないよう求める。カウンタ増加は特定 Echo や逆方向を証明しないが、全経路停止という説明を否定できる。
RFC 7296の IKE/Child SA 確立もデータ経路の結果ではない。IKE と ESP の別 transportでは分離が明白になる。IKE 前 ESP Echoは別の未認証提案である。RFC 7110が LSP Ping の戻り経路を指定したのも、戻り側の喪失が正方向の偽陰性を作るためだった。
運用証跡には、版/IANA 状態、能力交渉、peer、時刻、ID、Echo sequence、出力 SPI、要求戻り SPI、実受信 SPI、暗号判定、前後カウンタ、資源状態、通常通信の selector/SPD、サイズ、アプリ確認を分けて残す。
現実の層は能力表示と実測結果を分離する。最小初期仕様は検証可能な共通形式に限定し、停止判断を局所に残す。稼働コード優先では、文書より実際の SA と packet が運用現実を決める。
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