要約

  • イラクの通信メディア委員会(CMC)は2026年6月2日、コレク・テレコムとの2025年9月の和解合意を撤回し、運営停止と債権回収に向けた措置を進めると表明した。
  • 執行は8月20日のバグダッド本社と三つの販売拠点の閉鎖に始まり、9月初旬までに8州へ拡大した。バグダッドのルサファ第一審裁判所はコレク側が得ていた仮処分を取り消し、運営停止を維持した。
  • CMCは9月30日までに利用者がデジタルアカウントを確保するよう求め、期限後に交換機と交換局を順次停止するとした。債務額は375百万ドル、約1兆4000億ディナール、2兆ディナール超と説明が変遷し、コレク側はその根拠を争っている。

何が発効し、何がなお発表段階にあるか

2026年6月2日、イラクの通信メディア委員会(CMC)はコレク・テレコムとの2025年9月の和解合意を撤回した。同委員会は、契約上の義務が複数回の機会にもかかわらず履行されなかったと説明し、消費者窓口部門に利用者からの苦情対応を指示するとともに、政府機関と民間事業者に対しコレクとの新たな契約を控えるよう求めた(Shafaq News、2026年6月2日)。この撤回に続いてCMCは運営停止を命じ、約15億ドルと同委員会が見積もる債権の回収に向けた法務・規制・技術上の措置を進めるとした。同委員会の説明では、コレクの事業免許は2023年10月に失効したとされ、2023年11月の決定でサービス制限が始まり、2025年2月半ばにはインターネット接続が遮断された。同じ時期、イラクの通信相はボーダフォンを運営者とする国家連動の第4移動体免許を提案している(Rudaw)。

ここでは、効力を持った措置と、なお発表段階にとどまる措置を分けておきたい。拠点の閉鎖と、コレク側が得ていた仮処分を取り消す裁判所の判断は現に執行された。これに対し、ネットワークの停止と資産への先取特権の設定は、2026年8月9日にCMCが計画として公表したものである。9月30日までに利用者がデジタルアカウントを確保するよう求めたうえで、期限後にバグダッドなどで交換機と交換局を順次停止するという説明も、期限前の予告にとどまる。CMCのバリグ・アブ・カラル委員長は、コレクの債務が2兆イラク・ディナール超(約15億ドル)に達し、対外債務も10億ドルを超えると述べ、両者の協議は行き詰まったと説明した(Rudaw、2026年9月14日)。同時にCMCは、利用者に対してSIMカードを破棄したり番号を放棄したりしないよう呼びかけている。

2007年ライセンス料をめぐる権利と支払いの連鎖

争いの起点は2007年の移動体免許入札にある。CMCの説明では、係争中の未払い額は375百万ドル相当に上り、2025年9月の和解の下では約1兆4000億ディナール(約10億6000万ドル)とされていた。コレク側は、ライセンス料の支払いが旧イラクナの加入者基盤の移転を条件としていたのに、その移転が実現しなかったと主張する。和解は首相府に設けられた委員会に由来し、第4世代(4G)免許にも一部依存していたとコレクは説明している(964media、2026年9月6日)。

拠点閉鎖は連邦直轄の州に広がった。8月20日にバグダッドの本社と三つの販売拠点が閉鎖され、9月3日にはナジャフ、カルバラ、ディワニーヤ、バビルで、9月6日にはキルクーク、ニネワ、サラーフッディーンで閉鎖が実施され、対象は8州に達した。CMCは8月19日、利用者に対し他の認可事業者への登録と代替の認証・復旧手段の準備を呼びかけている(Wikipedia)。コレクはこうした措置を恣意的だと反発し、8月26日にはバグダッドのルサファ第一審裁判所が同社の仮処分を取り消し、CMCの運営停止を維持した(Shafaq News、2026年8月26日)。同社のシルワン・バルザーニ会長は措置を違法かつ規制の枠組みの外にあると述べ、コレクは三つのイラクの裁判所で法的措置に踏み切ったとしている(Rudaw)。同社はまた、アリー・アル=ザイディ首相に介入を求めたと報じられた(The Baghdad Telegraph、2026年9月7日)。

連邦とクルディスタンの管轄が交わる点

連邦当局の執行が及ぶ範囲は、クルディスタン地域との関係で一枚岩ではない。クルディスタン地域政府の運輸通信相アノ・ジャウハル氏は、連邦のCMCはクルディスタン地域内でコレクを閉鎖することはできず、同社は地域政府と同省の決定の下で事業を続けると述べた。同氏は、400万人超がコレクの番号を利用しているとし、紛争解決のための合同委員会の設置を求めた(Rudawトルコ語版)。連邦の措置と地域の運用が同じ事業者を挟んで併存する状態は、利用者基盤と設備の帰属をめぐる不確実性を残す。

海外裁判所の手続きという別の軸

所有と支配をめぐる争いは、イラク国外の裁判所にも及んでいる。ドバイ国際金融センター(DIFC)裁判所の記録には、Iraq Telecom Limited と International Holdings Limited を申立人、Korek Telecom Company LLC、Korek International Management Ltd および Sirwan Saber Mustafa を相手方とする2025年6月16日付の控訴裁判所判決が残る(Jus Mundi)。本稿が対象とするのはイラクで移動体事業を運営する Korek Telecom Company for Communications LLC であり、同名で言及される Korek International Management Ltd や上記の申立人らは別法人である。DIFC判決の結論は保持した記録に示されておらず、ここでは判断内容を述べない。

次の観測点

次の分岐点は2026年9月30日である。CMCはこの日までに利用者がデジタルアカウントを確保するよう求め、その後に交換機と交換局を順次停止するとしている。この期限が実際に設備の停止へ移るかどうか、連邦の執行がクルディスタン地域内の運用に及ぶかどうか、そして債務額と和解の効力をめぐる司法判断がどの方向に固まるかが、事業の継続範囲を決める観測点となる。

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