要約

  • draft-ietf-pce-entropy-label-position-07は、SR-MPLSのELI/EL配置について、能力交渉、LSP単位の要求、SR-ERO内の具体的位置を別々のEビットで表す。現在はPCE WG Last Call中のInternet-Draftである。
  • 第07版ではPCUpdのELP情報を旧集合の完全な代替とする。Eビットのない有効な集合は旧ペアを全て除去し、無効または部分的な集合は既存状態を変更しない。
  • この原子性は制御状態の規則である。ASICへの反映、経路上のERLD、ELのハッシュ利用、リンク分散、最終到達性を自動的には証明しない。

同じELを見た二台のルータが、同じ出口を選ぶ保証はない。読み取れる深さが同じでも、ハッシュの入力はローカル設定であり、ELだけを使う装置も、別のフィールドと組み合わせる装置もある。ELPは場所を決める。判断関数そのものは決めない。

Entropy Labelは、深いMPLSスタックの下にあるIPやトランスポート情報を毎回のぞき込まずに、フロー単位の変化を転送装置へ渡すための仕組みである。入口が値を計算し、ELIの直後にELを置く。中継LSRは、そのELが手の届く位置にあれば負荷分散に使える。

ここでERLDの定義が効く。RFC 8662のERLDは、単にラベルを読む深さではなく、読んだELを負荷分散関数で利用できる深さである。N段読めてもELを使えない装置はERLDをゼロとみなす。解析能力と転送能力を同一視しないための境界だ。

対象草案はStandards Trackを意図し、DatatrackerではIn WG Last Call、IESG状態はI-D Existsである。まだRFCでも最終IANA割当でもない。実装状況の節は既知の実装がないと記す。したがって、ここで評価できるのは提案された制御契約であって、市場導入や相互接続実績ではない。

Eビットは三つの時点を分ける

OPENのEビットは能力を表す。PCEはMSDとERLDから配置を計算できると宣言し、PCCは指定位置へ複数のELI/ELを挿入できると宣言する。

LSP-EXTENDED-FLAGのEビットは、あるLSP操作についてELP計算を要求する。SR-EROサブオブジェクトのEビットは、そのセグメントの後にペアを入れるという具体的な配置指示である。

能力、要求、位置は同じ形のビットでも別の証拠だ。能力があっても、この経路の入力が揃うとは限らない。要求しても完全な計算が可能とは限らない。完全な応答を受けても、PCCや転送チップが適用したとは限らない。

第07版は非対称な失敗を厳しくした。能力のない相手に位置を返してはならず、要求されていない情報は適用しない。ERLDやMSDが欠落、矛盾、不足していれば、利用可能なSR-EROを返すのではなく、限定されたエラーにする。部分的な成功で全体を装わない設計である。

「完全置換」は旧ペアの不存在まで要求する

第06版からの重要な差分は更新意味論にある。PCUpdで受け取る集合は、従来の位置集合に対する差分ではない。有効なE付き集合が全体を置き換え、有効だがEのない集合が旧ペアを全て消す。部分的または無効な集合は、既存の経路とELPを保ったままSRP IDにひもづくエラーを返す。

これにより、新旧位置の暗黙マージを禁止できる。しかし規範上の原子置換と、装置内部の一斉切替は同義ではない。制御デーモン、設定ストア、ラインカード、ASICが異なるトランザクション境界を持つ装置は多い。PCCが受理した後に非同期で各部へ配布することもある。

完了記録には、旧集合と新集合のフィンガープリント、SRP ID、計算時のトポロジー世代、PCC受理、ハードウェア読出し、旧ペアが残っていないことを含めるべきだ。新ペアの存在だけでは混在を排除できない。

読出し手段がないなら、状態は「意図を受理」と表現するのが正確だ。「切替完了」と呼ぶと、障害時に修復責任がPCE、PCC、プラットフォームのどこにあるか見えなくなる。

押し込める深さと読める深さは別物

MSDはノードが何枚のラベルを積めるかを制約し、ERLDは中継ノードがどこまで読んでELを利用できるかを制約する。複数ペアを加えると下流で読める確率は上がるが、各ペアは二枚分のスタックを消費する。可読性の改善が入口の実装限界を圧迫する。

分散シャーシでは、インターフェースやラインカード、低速・高速パスごとに能力が違うことがある。RFCは最小値をシステム値として広告することを認める。安全側ではあるが、必要以上のペアを生み、MSD余裕を減らす場合がある。単一の値は共通の下限であり、全パケット経路の精密な地図ではない。

ERLD-MSD広告がない場合も注意が必要だ。RFC 9088と9089によれば、不在から分かるのは広告機能をサポートしないことだけで、データプレーン能力の不存在ではない。自動計算は証拠不足として止められるが、資産台帳は「不明」を物理的なゼロへ書き換えてはならない。

Node SIDの下にある実経路は変化する。実装は途中の最小ERLDを計算できるが、できない場合は終端ERLDへフォールバックできる。後者は標準化された近似であり、隠れた中継ノードの保証ではない。IGPが再収束すれば、同じSIDでも別のハードウェアを通る。

したがってELPには証拠の世代が必要だ。トポロジー、セグメント解決、Binding SIDの関連LSP、ELC、ERLD、BMI-MSDを保存し、いずれかが変われば再計算する。構文上有効なSR-EROでも、根拠は期限切れになり得る。

分散は観測して初めて結果になる

ELが読み取られ、ハッシュに入っても、均等な利用率は保証されない。フローの大きさは異なり、少数の巨大フローが一つのメンバーを占有できる。ECMPやLAGの構成変更も結果を変える。再配置は順序乱れを増やす可能性もある。

評価には時間窓、メンバー別カウンタ、フロー分布、損失、順序乱れ、経路構成を同じ世代に結びつける必要がある。草案は新しい生存監視や動作検証を追加しない。PCEPを狭い仕組みに保つ一方、効果測定を運用側へ明確に残している。

段階 最低限の証拠 まだ証明しないこと
能力 OPENとセッション このLSPの入力充足
計算 世代、ELC、ERLD、MSD、方針 PCC受理
応答 完全SR-EROまたは限定エラー インストール
置換 新旧指紋と旧ペア消去 パケット利用
ハードウェア 部品ごとの読出し ハッシュ入力
ハッシュ 方針版とカウンタ 均衡
測定 窓、メンバー、損失、順序 サービス到達
結果 独立した終端観測 次の変更権限

第07版が強くするのは中間の制御証拠である。後段を自動的に取り込まないことが、その強さを保つ条件になる。