要約

  • CMA は7月29日、Microsoft 365 Personal と Family の更新前情報について消費者保護調査を公表した。
  • 公式案件記録では、調査開始日は7月27日で、対象は Microsoft の名称で事業を行う Microsoft Ireland Operations Limited とされる。
  • 既存利用者には2025年1月以降、残存契約期間中は追加料金なしで Copilot などが付与され、その後は別プランを選ぶか解約しない限り、高いプランへ自動更新される仕組みだった。
  • 従来の機能と価格を維持する Classic は、既存利用者向けに期間限定で用意された。
  • 年額は Personal が Classic 59.99ポンドに対し84.99ポンド、Family が79.99ポンドに対し104.99ポンドで、いずれも差は25ポンドだった。
  • CMA は違反を認定しておらず、英国での罰金、返金、是正命令、影響人数も確定していない。

更新画面が実質的な販売場所になる

サブスクリプションでは、価格表だけを見ても競争の実態は分からない。既に利用中のサービスが自動更新されるとき、どの選択肢が最初に表示され、何をしなければ現状が変わるのかが、購入結果を左右するからだ。

CMA の説明によれば、Microsoft は2025年1月から既存契約者に Copilot などの新機能を追加した。契約の残り期間では追加料金を求めず、期間終了時には、新機能を含む高いプランへ自動的に移る設計だった。利用者が別のプランを選ぶか、購読を終了すれば移行を避けられた。

この流れでは、新機能の体験が先に来て、価格判断が後に来る。追加機能を評価する利用者には合理的な選択になり得る。一方、従来機能だけを望む人にとっては、Classic を見つけて能動的に切り替える必要がある。自動更新の慣性がどちら側に割り当てられていたかが、今回の経済的な焦点だ。

Classic はあった。問題は見え方だ

Microsoft は、新規利用者向けには追加機能を含まない Personal と Family の提供を停止した。既存利用者には期間限定の Classic が残され、変更前と同じ機能を同じ価格で利用できた。

CMA は Classic が存在しなかったと主張しているわけではない。更新判断の前に、プランの内容と価格差を理解できる主要情報が届いていたかを調査する。メールで並列に比較された選択肢と、アカウント内を進んで初めて見つかる選択肢では、同じ「提供中」でも競争力が違う。

調査に必要なのは、更新通知の文面と送信時期、アカウント画面の順序、ボタンの表現、Classic へ移るまでの手順だ。現時点で CMA はそれらを公開していない。したがって、選択肢が隠されていたと断定することも、十分に目立っていたと結論づけることもできない。

年額と月額を混同しない

Personal Classic は年59.99ポンド、月5.99ポンドだった。追加機能を含む Personal は年84.99ポンド、月8.49ポンド。Family Classic は年79.99ポンド、月7.99ポンドで、新しい Family は年104.99ポンド、月10.49ポンドだった。

年額では両系列とも25ポンドの差になる。これは更新時の説明が経済的に重要だったことを示すが、消費者損害の総額ではない。英国で何人が Classic の対象だったか、何人が各プランを選んだか、表示方法が選択を変えたかは公表されていない。

また、25ポンドを払った全員が不利益を受けたとも限らない。Copilot などに差額以上の価値を感じる利用者もいる。CMA が検証するのは価値判断の代行ではなく、利用者が価格と機能を理解したうえで判断できたかどうかだ。

7月27日開始、29日公表

公式案件記録は調査開始を7月27日としている。CMA の発表と案件ページが公開されたのは29日だ。前者は手続き上の日付、後者は社会が一次情報を得た日であり、ニュースとしては両方を区別する必要がある。

対象法人は Microsoft Ireland Operations Limited で、「Microsoft」の名称で事業を行うと記載されている。Microsoft の公開ディレクトリーページへのリンクは読者の識別を助けるためのもので、規制当局が示した法人名を置き換えるものではない。

初期調査は2026年7月から12月までの予定で、年末までに次の更新が見込まれる。ただし、これは判決日でも最終決定の期限でもない。証拠によって論点が狭まることも、違反認定や是正に進むことも、措置なしで終了することもあり得る。

制裁権限と今回の結論は別物だ

CMA は2025年4月から、一定の消費者法違反を裁判所への提訴に先立って自ら判断できる直接執行権限を持つ。違反企業への法定上限は世界売上高の10%、または30万ポンドの方が高い場合はその額とされる。

この上限は制度上の最大値であり、Microsoft への罰金予測ではない。今回の案件では違反認定も、罰金も、返金命令もない。件数や支払総額が分からない以上、潜在的な賠償額を計算することもできない。

豪州の訴訟とイタリアの調査も別案件だ。各国で通知、価格、対象者、法的基準が異なる。さらに英国 CMA が5月に始めた Microsoft の企業向けソフトウェア市場調査とも別で、今回は Personal と Family の消費者向け更新情報に範囲が限られる。

次に確認すべきもの

判断を変えるのは、利用者が実際に見た更新経路だ。Classic がいつ表示されたか、比較表は対称だったか、切り替えに何段階必要だったか、期間限定という条件がどう説明されたか。集計データが出れば、対象者、選択者、自動更新者を分けて読む必要がある。

年末までの案件更新は、懸念が証拠収集後も残ったかを初めて示す可能性がある。それまでは結論を狭く保つべきだ。英国は Microsoft 365の更新選択を調査対象にした。しかし、25ポンド安い選択肢が法的に不十分な形で示されたかどうかは、まだ決まっていない。

情報源