要約

  • 2026年6月期の売上高は約1,169億ルピー(前年同期比約6.0%増)、EBITDAは約503億ルピー(同約9.1%増、マージン約43.1%)で四半期として初めて500億ルピーを超え、純損失は約375億ルピーに縮小した。市場予想(約539億ルピーの損失)を大きく上回る改善である。
  • 一方で、実際に投じられた設備投資は193億ルピー、発注済みは約910億ルピー、3年間の計画は約4,500億ルピーである。支出は発注の約2割にとどまり、転換の成否を分ける数字はここに集まる。
  • 3,500億ルピーの融資はSBI主導で原則合意されたが、9月14日時点でSBIは自らの取り分(約20%、約700億ルピー)の承諾書を出しておらず、他の参加行との条件が固まってから資金を出すとされる。コベナンツは支配と資金の流れに踏み込む。
  • 加入者1億9,310万人、うち4G/5Gが1億3,010万人(約67%)、ARPUは195ルピー(前年同期比10.2%増)。純増は1四半期の事実であり、持続性はまだ証明されていない。
  • 負債カレンダーは動いていない。スペクトル料の支払いはFY29前後に約2,700億ルピーでピークを迎えるとHSBCは推計し、経営計画は同じ期間の支払いを前提に組まれている。この二つの見通しの差が最大の不確実性である。

何が実際に変わったか

2026年6月期の決算は、少なくとも損益計算書の上では転換点に見える。売上高は約1,169億ルピー、EBITDAは約503億ルピーでマージンは約43.1%、純損失は約375億ルピーだった。前年同期の純損失は約661億ルピーだったので、損失はほぼ半減した(四半期報告、通信各社の決算報道、損失縮小の報道)。EBITDAが500億ルピーを超えたのは四半期として初めてで、直近12か月では約1,943億ルピーに達する。

この改善は市場予想に対する超過でもあった。ブルームバーグのコンセンサスは約539億ルピーの損失と約1,150億ルピーの売上高を想定していた(決算分析)。つまり、少なくとも一四半期については、市場はこの会社の収益力を過小評価していたことになる。

ただし、会計上の改善と現金の動きは別である。EBITDAの水準が上がっても、スペクトル料・AGR(調整後総収入)関連の支払いと設備投資が同じ期間に重なるなら、フリーキャッシュフローは依然としてマイナスになり得る。ここが本稿の中心的な問いである。

設備投資:発注910億ルピー、支出193億ルピー

6月期に実際に展開された設備投資は193億ルピーだった。同じ四半期に発注された額は約910億ルピー(決算説明会では910億ルピー)で、3年間の計画は約4,500億ルピーである(四半期報告)。

CEOのアビジット・キショール氏は2026年8月11日の説明会で、910億ルピー分の発注(うち193億ルピーはすでに支出済み)が約2四半期で展開され、平均して月およそ3,500サイトのペースになると述べ、6月期の支出が鈍かった理由を地政学的な逆風に帰した(説明会報道)。

数字の並びは単純である。3年間で4,500億ルピーを投じる計画に対し、最初の四半期の実行は193億ルピー、すなわち計画のごく一部である。発注が支出に変わるまでには、機器の納入、設置、電力・回線の手当て、そして支払いが必要になる。したがって「発注済み910億ルピー」は進捗の証拠ではなく、将来の支出義務の記録である。

資金調達の設計は、この支出を可能にするためのものだ。6月期に640億ルピーが調達され、その内訳は公的銀行コンソーシアム、国内民間銀行、外国銀行との外部商業借款という三つの層で説明されている。4Gの展開は17の優先サークルで18か月かけて完了し、5Gの配備は設備投資計画の3年目に入るという見通しが示されている(資金調達と展開計画)。6月末時点の銀行債務は21億ルピー、現金及び銀行残高は約656億ルピーである(四半期報告)。銀行債務が小さいことは健全性の証明ではなく、過去に銀行から借りられなかったことの裏返しでもある。

融資:原則合意と承諾書の間にあるもの

VILが組成を進めているのは、8〜10行からなるコンソーシアムによる3,500億ルピー、10年のタームローンである。SBIが約700億ルピーで最大、NaBFIDが約400億ルピーで2番手とされ、最低チケットは15億ルピー、ローンの輪郭は2026年10月中旬までに固まる見込みと報じられた。条件として、クマール・マンガラム・ビルラ氏が融資期間中ノンエグゼクティブ会長にとどまること、SBIがSBI口座を通じてキャッシュフローを監視すること、アディティア・ビルラ・グループが持ち分を維持すること、グループ会社からのコンフォート・ギャランティが挙げられている(融資条件の報道)。

SBI主導のコンソーシアムは約35億ドル(3,500億ルピー)の融資に原則合意したが、各行の最終承認、契約書類、実行は未了である。この報道では、繰延スペクトル料とAGR債務は合計約2兆141億ルピー、うち約1兆2,000億ルピーがFY44までに支払うスペクトル料とされている(原則合意の報道)。

9月14日時点で、SBIはまだ承諾書を発行していなかった。SBIは他の参加行との資金調達が固まってから資金を出す方針で、その取り分は全体の約20%、約700億ルピーである。3,500億ルピーのうち2,500億ルピーはファンデッド、1,000億ルピーはノンファンデッド(信用状枠)として求められている。グループ会社による保証が承諾を妨げていた行き詰まりを解いたと報じられている(承諾書の報道)。

ここで区別しておくべきことがある。原則合意は契約ではない。行レベルの承認、条件の確定、文書化、そして実行という4つの関門が残る。9月中旬の時点で、この会社が手にしているのは合意の枠組みであって、使途自由な現金ではない。

加入者とARPU:1四半期の純増が持つ意味

6月末の加入者数は1億9,310万人。うち4G/5Gは1億3,010万人で約67%を占める。ARPUは195ルピーで前年同期比10.2%増、ブレンドARPUは177ルピー、ブレンド解約率は3.8%だった(四半期報告)。

合併以来はじめての四半期純増であることは、価格競争が和らいだ局面で顧客基盤が底を打った可能性を示す。しかし1四半期の純増は傾向ではなく事象である。ARPUが10.2%上昇したのは主に料金改定の効果であり、加入者数の回復そのものが収益を押し上げたわけではない。純増が続くかどうかは、ネットワーク品質、すなわち設備投資の執行に依存する。これは循環である。投資が遅れれば品質が遅れ、品質が遅れれば純増が止まる。

ネットワーク指標は次の通りである。4G人口カバレッジは87.0%、ブロードバンドサイトは約58万900、ユニークなブロードバンド塔は約20万5,000(ユニーク塔はほぼ20万9,000)。データ使用量は1日88.4ペタバイトで前年同期比27.9%増。5Gは5G用スペクトルを持つ17サークルのうち200以上の都市で稼働し、5Gサイトは16,000超である(四半期報告)。

5Gについては、2026年9月24日に公開の配備マップが更新され、3,300MHzのみの配備と3,300MHz+26GHzの配備が区別された。同時に、8月の説明会時点の数字(17サークル・200都市以上、16,000サイト超)と、その後2四半期でさらに200都市以上をカバーする意向が再掲されている。地図上に印があることは、その周辺のすべての住所で5Gが使えることを保証しない(配備マップの更新)。

現金の算術:経営計画と売り手推計

経営側は2026年5月、CFOのテジャス・メータ氏の名で3年間の現金計画を示した。FY27からFY29までの累積現金EBITDAが約6,000億ルピー(EBITDAをほぼ3倍にする前提)、4,500億ルピー... の設備投資計画、3年間で約4,900億ルピーのスペクトル債務、50億〜60億ルピー... の債務返済、約2,500億ルピーの資金調達に加えて約3,500億ルピー相当の信用状ロールオーバー、そしてCLAM和解と所得税還付による約1,000億ルピーを合算し、期首残高を別として総額約1兆500億ルピー。法定債務の新たな株式転換は想定していない(現金計画の報道)。

会長のクマール・マンガラム・ビルラ氏は2026年9月1日の第31回定時株主総会で、事業計画が今後3年間のスペクトル料の全額支払いを織り込んでいると述べた。この期間に満期を迎えるスペクトル料は約4,900億ルピー(FY27に約710億ルピー、FY28に約1,500億ルピー、FY29に約2,700億ルピー)、AGRの支払いはFY35まで繰り延べられ、銀行借入残高は約22.5億ルピーにすぎないとした(株主総会の報道)。

売り手側の見方は異なる。HSBCは、VILがスペクトル支払い義務を満たすには3年で営業キャッシュフローをほぼ3倍にする必要があり、EBITDAの伸びはFY26からFY29で約15%にとどまると推計した。同レポートによれば、繰延スペクトル支払いはFY27に約710億ルピー、FY28に約1,530億ルピー、FY29とFY30に約2,700億ルピーでピークを迎え、FY31には約2,800億ルピーとなる。4,500億ルピーのネットワーク投資計画も市場シェアを取るには不十分だとしている(HSBC推計の報道)。

両者は同じカレンダーを見ているが、分子が違う。経営計画はEBITDAの大幅な拡大と資金調達の完遂を前提に置く。HSBCはEBITDAの伸びを控えめに見積もり、その差をそのまま資金ギャップとして示す。HSBCの数字は売り手アナリストの予測であり、確定した事実ではない。それでも、この会社の現金創出力がどこまで伸びるかという一点に、支払い能力の評価が集約されることを示している。

負債カレンダーは固定されたのか

2025年4月、政府は約3,695億ルピーのスペクトル料を1株10ルピーで株式に転換し、インド政府は48.99%を保有する最大株主であると同時に最大債権者になった。新たな現金は会社に入っていない。2026年4月30日、通信省(DoT)はAGR債務を約6,405億ルピーに確定した(従来は約8,770億ルピー)。返済の尾は2041年3月まで伸びている。2025年9月には4年間のモラトリアム明けでスペクトル分割払いの時計が再び動き出した。

これらの措置は負債の総額と時期を再編したが、消したわけではない。政府が株主と債権者を兼ねる構造は、支払いが滞った場合に「強制執行」ではなく「再交渉」が選ばれやすいという意味で緩衝になる。同時に、希薄化と議決権の偏在という別の問題を残す。負債カレンダーが固定されたと主張するには、追加の株式転換や新たなモラトリアムが起きないことが条件になる。

反証条件 — 何が起きれば見立ては崩れるか

第一に、四半期開示で「発注額」ではなく「支出額」がガイダンスの実行ペースに近づくこと。第二に、承諾書が発行され、コンソーシアムが閉じ、実行額が開示されること。第三に、加入者とARPUが、4G/5G比率の上昇を伴いながら持続的な純増を示すこと。第四に、政府による追加の債務の株式転換や新たなモラトリアムが起きないこと。逆に、これらが起きれば、負債カレンダーは固定されておらず、実行の制約も解けていないことになる。

現時点で言えるのは次のことだ。紙の上の資本修復は完了した。損益の改善は本物である。しかし財務体質が改善したことと、ネットワークが約束通りに建設されることは別の事実であり、それを分ける数字は、発注910億ルピーではなく、四半期ごとに開示される支出額である。