要約
- SalesforceのGAAP希薄化後EPSは119%増の4.29ドルとなったが、営業利益は前年の23億3200万ドルから23億3100万ドルへ100万ドル減った。
- 戦略投資の純利益は26億1300万ドルで、EPSへの寄与は2.43ドルだった。営業外の変動要因であり、継続は保証されない。
- 希薄化後株式数は14.7%減の8億2100万株。Salesforceは250億ドルの社債を発行して加速型自社株買いを行い、当初約1億300万株を受け取った。
- cRPOの14%増と10億9800万ドルのフリーキャッシュフローは事業の強さを示す。今後は、その資金が金利負担と買収統合を継続的に支えられるかが問われる。
1株利益という分数では、分子だけでなく分母も経営判断で動く。
Salesforceの2027年度第2四半期決算では、GAAP営業利益が23億3100万ドルだった。前年同期は23億3200万ドルで、実質的に変化がない。それでも希薄化後EPSは1.96ドルから4.29ドルへ倍増した。
差は営業利益より下の項目と、最後に利益を割る株式数にある。戦略投資の時価変動が純利益を押し上げ、借入で実行した自社株買いが分母を縮めた。顧客が生む利益、市場価格が生む評価益、資本政策が生む1株当たり効果が、一つの数字に重なった。
いずれも会計上の事実だが、再現性は異なる。契約更新は顧客価値で積み重ねられる。投資益は相場次第で逆転する。買い戻した株は戻らない一方、利払い義務も消えない。
営業外で生まれた2.43ドル
売上高は10.8%増の113億4500万ドル、粗利益は86億9600万ドルとなった。事業規模は拡大したが、費用も増えた。GAAP営業利益率は前年の約22.8%から20.5%へ低下し、営業利益の増加にはつながらなかった。
その下では、戦略投資の純利益が前年の600万ドルから26億1300万ドルへ膨らんだ。支払利息は6700万ドルから4億7300万ドルへ増加した。その他収益と税を経て、純利益は18億8700万ドルから35億2600万ドルになった。
Salesforceは投資益の寄与を明示している。四半期EPS4.29ドルのうち2.43ドルである。開示された影響だけを単純に差し引けば1.86ドルとなる。これは別のGAAP指標でも会社の非GAAP指標でもなく、他の前年差を調整するものでもない。投資時価の影響だけを見るための計算だ。この限定的な見方では、残りは前年の1.96ドルをわずかに下回る。
評価益に価値がないわけではない。売却可能な価値上昇なら株主資産を増やす。ただし、サブスクリプションの粗利とは違い、経営側が再現時期を決められない。会社も、将来の投資損益は予想できず、重要な変動になり得ると説明する。
確認したForm 10-Qには、26億1300万ドル全体を一つの銘柄に結びつけられる内訳はない。したがって、特定企業の上昇を推測するのではなく、変動する営業外利益が今期EPSの差の大半を占めた、という範囲にとどめるべきだ。
株式数の減少には固定費が伴う
希薄化後平均株式数は9億6200万株から8億2100万株へ減った。同じ純利益でも、14.7%少ない株で割れば1株当たりは増える。
Salesforceは3月、2028年から2066年までの満期を持つ無担保社債を総額250億ドル発行し、費用控除後248億ドルを受け取った。その資金を加速型自社株買いに充てた。
会社は250億ドルを前払いし、平均198.34ドルで約1億300万株の初期交付を受けた。想定総数のおよそ80%である。最終精算は2027年度第3四半期の予定で、契約式と株価によって追加の株式または現金が動く可能性がある。
会計上は、交付済み株式、手数料、物品税を合わせて206億ドルを自己株式に計上し、未精算の先渡し部分として追加払込資本を46億ドル減らした。7月末の無担保社債簿価は333億ドル。現金、現金同等物、有価証券の合計は114億ドルだった。Informatica買収資金を借り換えた60億ドルのタームローンも残る。
会社によると、加速型買い戻しは上期の希薄化後EPSを0.57ドル押し上げた。四半期だけの数字ではないため、今期投資益の2.43ドルと直接比較はできない。それでも、借入で買った分母縮小がすでに1株利益に表れていることは確認できる。
支払利息は前年同期比で4億600万ドル増えた。増加のすべてを買い戻し社債に帰すことはできない。買収関連や既存の借入もあるからだ。ただし、株主の変動請求権を減らす代わりに、債権者への固定支払いが増えた構造は変わらない。
契約と現金には実体がある
EPSの構成を分けても、事業の改善は消えない。今後12カ月分の残存履行義務に当たるcRPOは335億ドルで、前年比・為替一定とも14%増。RPO全体は11%増の663億ドルだった。営業キャッシュフローは71%増の12億6900万ドル、会社定義のフリーキャッシュフローは81%増の10億9800万ドルに達した。
これは顧客契約と回収の証拠であり、投資先の株価上昇では作れない。
ただし、売上の企業範囲は変わった。総売上113億4500万ドルのうち4億5600万ドル、サブスクリプション・サポート売上108億2000万ドルのうち4億4000万ドルをInformaticaが占めた。開示額だけを除くと、総売上は108億8900万ドルとなり、前年のSalesforce全体を6.4%上回る。サブスクリプション等は103億8000万ドルで7.1%増となる。
これは会社定義のオーガニック成長率ではない。正式なプロフォーマ比較には両期間にInformaticaを含め、買収会計を調整する必要がある。単純な差し引きは、10.8%が同一範囲の成長ではないことを示すだけだ。
通期売上見通しの2億ドル引き上げも、内訳はオーガニック成長1億ドル、ContentfulとFinの買収寄与2億ドル、為替悪化1億ドルである。Informaticaは通期成長率の3ポイント強、第3四半期の4ポイント強を占める見通しだ。
AI指標も定義を読む必要がある。Agentforce ARRは15億ドルを超えたが、今期からAI製品、Slackbot、Headless 360を含む。累計70億のAgentic Work Unitsは利用活動を示す一方、認識売上、営業利益、現金のいずれでもない。
年間キャッシュが判定する
四半期キャッシュの伸びは大きいが、通期の営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローの成長見通しは4%から5%のままである。季節性と運転資本の動きがある以上、1四半期をそのまま年換算できない。
自社株買いの成否は、EPSを上げたかどうかでは決まらない。分母を減らせば上がる。税引き後の事業キャッシュが利息を払い、買収を統合し、製品投資を続けた上で、250億ドルを債務返済や別の投資に使うより高い価値を生んだかが本当の判断基準だ。
cRPOの売上転換、営業利益率、通期キャッシュ、支払利息、最終精算、買収寄与、投資益がゼロに近づいた後のEPSを追えば、その答えは見えてくる。4.29ドルは正確でも、単一の営業成長率ではない。
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