要約
- IS-IS の一つの LSP セットには 256 個の番号しかない。RFC 5311 は、同じ Originating System が固有の Additional System ID で Extended LSP セットを増設する仕組みであり、独立したルーターを増やす仕組みではない。
- 判断単位は断片ではなく連鎖である。生きた Extended LSP 0、Alias TLV 24、整合するエリア、方向ごとに異なるコストのリンク、許可された内容、決定的な優先順位、親の OL 状態が揃わなければならない。
ノード数の増加を設備数と読んではならない
LSDB を資産台帳に投影すると、昨日までなかった system ID が一台のルーターとして現れる。しかし現場では、ラックも電源も保守対象も増えていない。この食い違いは収集ミスではなく、RFC 5311 が容量を増やすために意図した表現だ。
一つの LSP セットが持つ番号は 256 個で、文書が示す LSP の最大値は 1492 バイトである。トラフィックエンジニアリング、マルチトポロジー、能力情報、到達性が増えれば、この容器は尽きる。そこで物理的な Originating System は Additional System ID を使い、別の Extended LSP セットを生成する。
Virtual IS は追加された「情報の差出人名」であって、別の意思決定主体ではない。ここを誤ると、監視は一つの障害を複数に割り、所有権管理は同じ装置を別チームへ割り当て、可用性集計は存在しない機器を母数に入れる。物理 ID、容量 ID、トポロジー上の役割、現在の到達性を別々に保持する必要がある。
ゼロ番が消えれば残りの断片も使えない
Extended LSP も通常どおり生成、flood、age、purge される。ただし Additional System ID に対応する Extended LSP 0 が存在しないか、remaining lifetime がゼロなら、そのセットに属する他の LSP は一切処理されない。
つまり番号 1 から 255 の断片がコレクターに残っていても、利用資格は失われている場合がある。署名やチェックサムが正しく、内容が読めても同じだ。断片ごとの「最新行」を返す観測系は、ゼロ番の失効後に古い情報を現役として見せかねない。
ゼロ番には IS Alias ID TLV 24 が必須で、通常の Originating System ID を示す。Area Address も必要で、その集合は通常の LSP 0 が示す集合の部分集合でなければならず、構文上も同一であることが望ましい。したがって利用判定は 追加 ID → 生きたゼロ番 → エイリアス → 通常 ID → レベルとエリア の経路をたどる。
Additional System ID の一意性も装置内では完結しない。Level 1 ならエリア全体、Level 2 ならドメイン全体で一意でなければならない。単一設定ファイルだけを検査しても、競合する起点がないことは証明できない。
合成された二方向は同じリンクではない
Original LSP セットは関連する Virtual IS をメトリック 0 の隣接として広告する。これにより双方向接続チェックを成立させ、Virtual IS へ到達するコストを物理的な親へ到達するコストと同じにする。
逆方向では Extended LSP セットが Originating System を非ゼロのメトリック、推奨では MaxLinkMetric-1 で広告する。マルチトポロジーを収容するなら、該当するすべてのトポロジーについて両側に対応する隣接が必要になる。
二つの広告は物理ケーブルの両端を測ったものではない。ゼロコスト方向は追加容量を実ノードへ接着し、高コスト方向は仮想ノードが経路の近道になるのを防ぐ。グラフ処理が両者を一つの無向辺へ正規化すると、互換性を成立させる制約そのものを消してしまう。
RFC 5311 が RFC 3786 を置き換えた要点は、Extended LSP の内容を SPF ツリーの構築へ影響しない形に制限したことにある。旧実装は Virtual IS が親の先にいることだけを見て、そこを経由して別の IS に到達できるとは見ない。そのため特別なモードなしでも、新旧実装の SPF が整合する。
空いた場所に置ける情報には境界がある
TLV 3、4、5 は Extended LSP で禁止される。理解する受信者はそれらを無視し、エラーを報告すべきだが、同じセット内の許可された情報は処理し続ける。検証はセット全体を白黒に分けるのではなく、フィールド単位で権限を判定しなければならない。
IS 隣接到達性はさらに限定される。Extended LSP が隣接として示してよい相手は Originating System だけで、通常の隣接は Original LSP セットに残る。TLV 23 と MT TLV 223 は隣接属性を移せるが、関係そのものは作れない。元セットに TLV 22 または 222 がなければ、属性だけから隣接の存在を推論してはならない。
Extended LSP の OL、ATT、P ビットはいずれもゼロである必要がある。ATT が立つと、旧ルーターは物理的な親が他エリアへ接続していないのに Virtual IS をデフォルト出口として扱う可能性がある。合成 ID に親が持たない権限を与えてはいけない。
リーフ情報は容量問題を転送問題へ変える
Extended LSP には、従来の内部・外部 IP、Extended IP、マルチトポロジー IP、IPv6、MT IPv6 の各到達性を収容できる。複数のトポロジーを使う場合、MT TLV 229 はリーフ広告が表すすべてのトポロジーを列挙する。
プレフィックスを拡張空間へ移すと、受信者はそれを RIB に反映し FIB を更新し得る。RFC は転送更新を起動するイベントが増えると警告し、可能ならリーフ情報を通常セットへ残すよう勧める。容量の拡大が、そのままデータプレーンの変更頻度へ波及するからだ。
観測レシートには、プレフィックス、出所断片、Additional System ID、入場を許したゼロ番、MTID、親の OL 世代、消費した RIB/FIB 世代を結び付ける必要がある。Extended LSP の個数だけでは、どの断片が実際のパケット経路を変えたのか分からない。
子の OL はゼロでも親の overload には従う
Extended LSP 自身の OL ビットは常にゼロである。それでも Virtual IS の利用可否は、通常の Originating System が発行する OL 状態に支配される。親が overload でなければ親子の到達性は整合し、親が OL を立てれば旧ルーターは関連する Virtual IS を到達不能と見る。対応実装も同じ結論を出さなければならない。
これはリーフ情報を拡張空間に置いたときのループを防ぐ。同時に、Virtual IS の行だけを監視する危険を示す。その行には OL=0、正の寿命、正しい alias が並んでいても、別 ID の親 LSP が一族全体を利用不能にしているかもしれない。
健全性は、親、別名、エリア、レベル、ゼロ番、合成辺、OL 世代をまとめて評価する。識別子が別だからといって状態を分離すれば、正規化されたデータがプロトコルの意味を裏切る。
勝者だけを残すと判断根拠が消える
移行中には、通常セットと複数の拡張セットが同じ隣接属性の候補を持ち得る。競合しない値は加算される。競合すれば Original LSP が優先し、そこに値がなければ最小の Additional System ID を持つ Extended LSP が勝つ。同じ MTID では TLV 22 が 23 に、222 が 223 に優先する。
最終値だけを保存すると、なぜその値が選ばれたのか説明できない。全候補、出所 LSP、TLV 種別、MTID、sequence、lifetime、適用ルールを残すべきだ。そうしなければ、候補の失効による正当な勝者交代が原因不明の揺れに見える。
将来の拡張が新しい TLV を Extended LSP に置くことはできる。しかし IANA のコード割当、ソフトウェアのデコード能力、運用網全体の理解は別々の証拠だ。番号が見えることは、意味を安全に使えることを保証しない。
レシートの主語は物理的な起点である
有用な非秘密レシートには、Originating System と通常 ID、レベルとエリア、すべての Additional System ID と一意性範囲、各ゼロ番の ID・sequence・lifetime・purge、TLV 24、エリア部分集合、ゼロコストと非ゼロコストの両方向、トポロジー、禁止 TLV とビットの検査、リーフと属性断片、競合候補と優先規則、親 OL 世代、RIB/FIB 世代、パケット観測、ロールバック判断を含める。
LSDB は情報の容器を増やした。それでも現実の機器、責任、障害は一つの起点に残る。追加された記号を独立した現実へ昇格させないことが、この拡張の安全条件である。
Sources
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc5311.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc5311.txt
- https://www.rfc-editor.org/info/rfc5311/
- https://datatracker.ietf.org/doc/rfc5311/
- https://datatracker.ietf.org/doc/rfc5311/history/
- https://datatracker.ietf.org/doc/rfc5311/references/
- https://datatracker.ietf.org/doc/rfc5311/referencedby/
- https://www.rfc-editor.org/errata/rfc5311
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc3786.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc5305.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc5307.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc5120.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc5304.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc1195.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9350.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9885.html
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc7981.html
- https://www.iana.org/assignments/isis-tlv-codepoints/isis-tlv-codepoints.xhtml
- https://heng.lu/running-code-primary-the-patch-needed-to-preserve-the-internet-original-design/
- https://heng.lu/on-reality-layers-symbolic-power-and-why-clarity-feels-so-hostile/
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