要約
- Rakuten Symphony は、Kyivstar との Open RAN 実証を進める METI 補助事業に採択された。
- 第1段階では、4G 環境で機能と相互運用性を室内検証した。
- 第2段階では、キーウ周辺の既存網で商用顧客を収容する4G LTE フィールド試験を行う。
- 分散型 RAN と集中型 RAN を評価し、5G は専用ラボでの検証にとどめる。
- 総事業費は約7億1,000万円、補助額は最大3億5,000万円の見込みである。
無線処理をどこに置くかは、平常時の効率だけでなく、障害時に何を失うかを決める。
Rakuten Symphony と Kyivstar が第2段階で D-RAN と C-RAN を比較する意味はそこにある。第1段階は4G の機能と相互運用性をラボで確かめた。次はキーウ周辺の稼働中ネットワークで、商用顧客の通信を扱う。
テスト対象は新設の孤立設備ではない。旧設備を置き換えるブラウンフィールド環境であり、変更中もサービスを続ける必要がある。
分散型は現場を増やし、集中型は依存を集める
D-RAN は処理機能を基地局に近い場所へ分散する。伝送への要求を抑えられる場面がある一方、電源と保守を必要とする地点が増える。
C-RAN は処理を集約し、資源を共有しやすくする。だが、無線側と集中処理側を結ぶ回線、同期、中央拠点の可用性に強く依存する。
ウクライナでは停電や設備損傷が運用条件に含まれる。分散型なら一つの障害を局所化できる可能性があるが、各地点の電源維持が難しい。集中型なら保護対象を絞れる可能性があるが、中央層や伝送の障害が広い範囲へ波及し得る。
発表は優劣を決めていない。サイト数、目標稼働率、復旧時間も示していない。実証はその空白を測るためにある。
商用顧客を収容しても商用品にはならない
実際の顧客通信を通すと、変更失敗がサービス障害として現れる。負荷の揺れ、ハンドオーバー、アラーム、障害切り分けをデモ端末だけで処理することはできない。
証拠としての質は上がる。しかし、Kyivstar が Open RAN という料金プランを販売するわけではなく、全国展開を決めたとも書かれていない。
キーウ周辺の試験構成が成功しても、別の周波数帯、地形、交通量で同じ結果になるとは限らない。実証は適用範囲と再現条件を明らかにして初めて商用判断に使える。
5G は別の証拠段階にある
第2段階は4G/5G 構成へ広がるが、フィールドに出るのは4G LTE である。5G 機能は専用ラボで評価され、将来の商用導入の基礎と位置づけられた。
したがって、今回を「キーウでの5G Open RAN 開始」と呼ぶことはできない。ウクライナ政府が調整する複数事業者の5G 都市実証とも別のプロジェクトである。
5G の次の証拠は、使用周波数、フィールド構成、サイト、期間、結果を伴う必要がある。現時点ではいずれも発表されていない。
補助金が買うのは判断材料
総事業費は約7億1,000万円、METI の補助は最大3億5,000万円である。上限は総額の半分未満であり、全額支給済みという意味でもない。
残額を誰が負担するか、何サイトに使うかは公表されていない。単純なサイト単価は計算できない。
それでも政策的な意義は明確だ。既存網を止めずにオープンな構成へ移せるか、集中化と分散化のどちらが復旧要件に合うか、運用負荷がどこへ移るかを測れる。
結果が良くても、その後には調達、資金、展開範囲、移行順序の決定が残る。今回の補助は全国網を購入するのではなく、その決定を誤らないための実地データを購入する。

