Summary
- CHESS は清算、決済、サブレジスターに関わる機能を担い、清算参加者、証券会社、レジストリー、発行体、投資家の仕組みと接続する。そのため ASX の進捗表現や日付は、ASX の外部にある予算、人員、試験計画を動かした。
- ASX は独立レビューが重大な技術、ガバナンス、遂行上の課題を示した後、2022年11月に従来の経路を停止し、税引前で2億4500万から2億5500万豪ドルの認識中止を見込んだ。この会計額は市場全体の費用ではない。
- 法的段階は分ける必要がある。ASIC は2024年に主張を提起し、ASX は2026年6月に「progressing well」という表現について誤解を招く行為を認め、Federal Court は同年7月3日に2050万豪ドルの制裁金と ASIC 費用への別途300万豪ドルの拠出を命じた。
- 再設計では TCS 製品を採用し、Accenture をソリューション・インテグレーターとし、二段階の提供とした。清算の Release 1は2026年4月20日に稼働したが、決済とサブレジスターの Release 2が完了したことを意味しない。
- 恒久的な修復には、要件、クリティカルパス、意思決定、試験、供給者依存、参加者準備、現行 CHESS の強靱性、規制上の指摘、公表文、是正完了証拠を結ぶ保証台帳が必要である。
中央の予定は市場全体の統制入力だった
CHESS はオーストラリア証券市場の取引後インフラの中心にある。各参加者は、中央システムのメッセージ、規則、運用時間に合わせてアプリケーションを変更し、接続試験を計画し、担当者を確保し、切替手順を整える。運営者が示す日付は、通常の買い手が持つ社内見積りとは異なる。他社の予算執行や技術変更を開始させるため、日付を支える証拠そのものが市場統制になる。
だからといって ASX が全作業を支配したわけではない。供給者は自社製品と要員を、参加者は自社システムを、ASIC と Reserve Bank of Australia は異なる監督手段を支配していた。それでも ASX は統合計画、中央要件、アーキテクチャ受入れ、共通日程、ルール、移行判断を保持した。責任は「すべてのステークホルダー」に均等配分するのではなく、誰が観察し、決め、止められたかに沿って配分すべきである。
ASX は上場会社、現行 CHESS の運営者、更改スポンサー、技術購入者、規制対象インフラの運営者でもあった。資本市場向けの発表が、証券会社やレジストリーの運用準備を同時に左右した。調達判断が金融安定に波及し、技術状況が開示の根拠になった。工学、継続性、取締役会、開示を別々の統制経路に分ければ、統合された真実を誰も所有しない空白が生じる。
年表は評価ではなく証拠の境界を示す
ASX は2016年に更改を始め、その後、分散型台帳技術に関連する設計を進めた。設計、開発、業界試験、予定は複数回変わった。ASIC が後に公開した記録は、2021年末から2022年初めの重要な時点について、予定日を支える十分なクリティカルパスがなく、社内状態が赤で、範囲または性能を縮小した試験環境が開かれた状況を記述している。ASX は2022年2月、2023年4月に向けて順調に進んでいる趣旨を公表した。
数週間後、遅延の可能性が高いことが示された。ASX は Accenture に、アプリケーション、台帳、遂行体制の外部レビューを依頼した。2022年11月17日、ASX は当時の経路を停止し、解決策を再評価し、資産計上したソフトウェアについて税引前2億4500万から2億5500万豪ドルの非現金認識中止を見込むと発表した。同時に、現行 CHESS は稼働しており、引き続き投資すると説明した。
二つの事実は両立する。停止した仕組みは本番サービスを置き換えていなかったため、市場はその日止まらなかった。しかし停止は、古い仕組みを安全に運営しなければならない期間を延ばした。容量、サイバー対策、復旧、供給者支援、希少な専門知識を守る現行系の仕事は、新システムに従属する残務ではなく、並行する重要プログラムだった。
四十五件の勧告は件数ではなく有効性で閉じる
外部レビューは45件の勧告を示した。件数を完了欄で数えても保証にはならない。新しい方針が書かれた、会議が追加された、追跡表の状態が変わったという事実だけでは、対象リスクが低下したと証明できない。要件に関する是正なら、版管理され、承認され、試験可能な要件が必要である。アーキテクチャなら、判断、代替案、非機能証拠、未解決事項を残さなければならない。
遂行に関する是正は、依存関係、資源競合、現実的予測を見えるようにする。ガバナンスに関する是正は、悪い情報がどのように上がり、意思決定にどう反映されるかを変える。試験に関する是正は、環境、データ、開始条件、終了条件、欠陥基準、運用シナリオを接続する。書類ではなく、圧力がかかった場面で実際に使われた証拠が完了判断を支える。
規制上要求された特別報告や監査は独立した規律を加えたが、プログラム運営を規制当局へ移したわけではない。ASIC は行為とライセンス義務を調べ、RBA は金融安定基準と運用リスクを評価し、監査人は定義された統制を試験できる。日々の範囲、日程、品質、資源、参加者準備を統合する責任は ASX に残る。
各完了には所有者、実際の運用例、十分に独立した確認、残余リスクの説明が必要である。例外を受け入れるなら、影響、期限、補完統制、失効日を記録する。作業を完了してもリスクが残るなら、そのリスクは開いたまま表示しなければならない。そうしなければ保証は文書管理に変質する。
社内の赤と社外の言葉の間に開示統制がある
赤い状態だけで失敗が確定するわけではない。複雑な計画には回復の余地がある。しかし、切れたクリティカルパス、縮小された試験範囲、未解決の性能課題、遅れた作業は、広い安心表現を使う前に整合させるべき材料である。問題は色の有無ではなく、その意味、認識者、回復を示す反証、公表結論の承認者である。
取締役会は全欠陥票を読む必要はないが、重要な衝突を残した要約を要求できる。日程への信頼は具体的な依存関係に、試験準備は開始・終了基準に、アーキテクチャへの信頼は未決判断に、市場準備は観察結果に結び付ける。要約された判断には、所有者、日付、根拠、無効となる条件が必要である。
RBA は後の評価で、技術やリスクの取締役会資料が長すぎる、または技術的すぎ、主要論点を十分強調していなかったと指摘した。情報量は意思決定の質ではない。分厚い資料が論点を埋めることもある。有効な資料は、求める判断、賛否の証拠、異論、不確実性、遅延の影響、停止権限を前面に置く。
開示を担う会議体は否定命題も試すべきである。どの事実が日付を信用できなくするのか。余裕のない前提は何か。試験環境は代表性を持つか。範囲縮小によって節目の意味が変わっていないか。参加者の作業が終わらなければ消せないリスクは何か。答えが監査可能でなければ、公表表現を狭くする必要がある。
主張、認定前の合意、裁判所命令を混同しない
ASIC は2024年8月、Federal Court で手続を開始し、2022年2月に示された2023年4月への進行状況と「progressing well」という表現が誤解を招くものだったと主張した。この時点では規制当局の主張と提出書類であり、個人の責任、意図、刑事行為を確定する最終判断ではなかった。
2026年6月、ASIC は、ASX が「progressing well」に関する誤解を招く行為を認めたと発表した。公開記録は、その認定対象を、重要時点で十分なクリティカルパスがなかったこと、社内で赤と分類されていたこと、範囲、性能、予定に未解決事項があったことと結び付けた。ただし提案された解決は、その時点では裁判所の承認を要した。
2026年7月3日、ASIC は Federal Court の命令を公表した。ASX Limited に2050万豪ドルの制裁金が命じられ、ASIC の費用に対する300万豪ドルの拠出が別に命じられた。正確な説明責任報道は、規制当局が何を主張し、会社が何を認め、裁判所が何を命じたかを分ける。公開記録が支えない個人責任や故意を付け足さない。
この過程は、サービス停止がなくても進捗表現が金銭的リスクを生み得ることも示す。参加者は中央日程に基づき、人を確保し、接続を変え、試験枠を予約し、代替作業を延期する。内部証拠と外部表現の重大な差は、無駄な作業、選択肢の遅れ、弱い計画につながる。開示は広報ではなく、運用統制の一部である。
分散型台帳を単独原因にしない
旧設計が分散型台帳に関連したため、この事案はブロックチェーンの是非に単純化されやすい。公開資料は、特定技術が本質的に結果を起こしたとは証明していない。新規性は、統合作業、性能不確実性、専門家依存、検証難度を増やし得る。しかしその効果は具体的な設計と遂行モデルで示す必要がある。不明確な要件、弱い統治、代表性のない試験は従来型システムでも問題になる。
有益なのは統制モデルの比較である。旧計画では、要件の完全性、非機能性能、遂行依存、試験の代表性、クリティカルパス、公表までの状態伝達を証明する必要があった。再設計でも問いは消えず、製品適合、設定、カスタマイズ、供給者依存、リリース間インターフェース、データ移行、運用準備として現れる。
2023年11月の TCS 製品選択は、個別開発の一部を減らし、他市場での経験を利用できる可能性があった。一方で製品制約、更新依存、知識集中、豪州市場固有の調整を持ち込む。Accenture の統合役割は調整力を加えるが、新しい責任境界も作る。ASX は統合者を独立して問い直せるアーキテクチャ、セキュリティ、運用受入れ能力を保持しなければならない。
他市場での利用実績は証拠だが、豪州適合の代替ではない。法的構造、保有形態、メッセージ、参加者の生態、運用慣行は異なり得る。過剰なカスタマイズは標準製品の利点を損ない、必要な変更を拒めば運用回避策にリスクを移す。取捨選択を判断記録に残し、試験する必要がある。
二段階提供は集中を下げ、混在を増やす
新たな経路は、清算を Release 1、決済とサブレジスターを Release 2に分けた。段階化は一度の切替に全変更を集中させず、限定範囲から運用経験を得られる。反面、新旧が共存する状態、暫定インターフェース、段階をまたぐ依存を作る。段階化が常に安全なのではなく、新しい故障形態が定義され、試験され、説明されて初めて安全性が高まる。
清算の Release 1は2026年4月20日に稼働し、ASX は正常に運営されていると説明した。これは具体的で重要な成果である。ただし、後の成功は2022年の表現を当時にさかのぼって正確にせず、Release 2の完了も示さない。2026年5月の技術委員会資料には、後続段階の設計と準備が続く様子がある。
節目は名称ではなく、機能、メッセージ、対象参加者、移行条件、復帰策で定義する必要がある。製品選択、設計完了、試験準備、運用準備、稼働、安定化は別の証拠段階である。単数形の「CHESS 更改」という言葉によって、清算の稼働を全機能完了に広げてはならない。
稼働後の保証も、可用性だけを見て終わらない。取引照合、例外、性能、容量、セキュリティ事象、手動介入、欠陥、参加者報告を調べ、稼働判断に用いた仮定と実績を比較する。短期の安定は好材料だが、長期強靱性の証明ではない。保証期間、欠陥所有者、供給者へのエスカレーション、運用部門への移管を明確にする。
2024年12月の障害は別の因果連鎖に属する
2024年12月20日、現行 CHESS の技術問題によりバッチ決済が失敗し、対象取引は次の営業日に決済された。RBA の臨時評価は、誤ったメモリ割当てロジックと、その場面に対する計画済みで完全に試験された代替手段の欠如を記述し、ASX Clear と ASX Settlement の運用リスク評価を引き下げた。
この障害は、長い更改中に同じ運営者で起きたため説明責任上重要である。しかし停止された新設計が原因ではない。混同すると、現行系の技術、変更、復旧、監督の因果連鎖と、旧更改計画の要件、遂行、開示、ガバナンスの因果連鎖を双方とも曖昧にする。
障害が示すのは、延期が旧システムの制約への曝露を延ばし、急いだ切替は別の移行リスクを作るという関係である。「早いほど安全」「完全になるまで動かさない」という標語では判断できない。容量、欠陥、復旧シナリオ、重要人材、参加者準備、新システム証拠を継続的に比較すべきである。
一般的な事業継続計画があっても、具体的な決済失敗を市場の時間制約内で回復できるとは証明できない。重要機能には演習済み代替策、判断閾値、通信、照合、流動性への配慮が要る。現行 CHESS は、完全な代替が安定を示すまで、独自の予算、保守計画、保護された専門要員を必要とする。
ASX の会計外で参加者費用が発生した
2億4500万から2億5500万豪ドルは、ASX が示した資産計上ソフトウェアの会計上の認識中止額であり、社会全体の費用ではない。ASIC と RBA は2022年の書簡で、業界が大きな費用を負い、その負担が均等ではないことに言及した。清算参加者、証券会社、レジストリー、サービス会社は、それぞれ開発、試験、人員、計画に投資していた。
一部の作業は再利用でき、一部は経路変更で価値を失った。機関別データなしに総額を作るのは根拠を越える。それでも参加者影響台帳は作れる。必要変更、依存日、試験証拠、暫定策、再計画によるやり直し、参加者類型ごとの負担を記録する。大手銀行と小規模証券会社では同じ変更の影響が異なる。
協議の開催回数も合意の証拠ではない。技術委員会や業務委員会は、反対意見、制約、準備差が意思決定に入って初めて有効になる。参加者は自らの準備を正直に報告する責任を持つが、見えない中央設計や証拠には責任を負えない。ASX が範囲や順序を変える際は、誰が利益を得て、誰がやり直し、どのリスクが移動しただけなのかを示すべきである。
この非対称性が開示の精度を重要にする。中央を支配できない組織ほど、ASX が「活動を完了した」「十分な保証を得た」「条件付き目標日である」を正しく分けることに依存する。広い自信表現は、情報が少ない側へ静かにリスクを移す。
取締役会は方向、証拠要求、停止権を支配する
取締役会はコードを書かないが、傍観者ではない。重要変革における支配は、戦略とリスク選好の承認、経営責任者の指定、意思決定に使える報告の要求、独立保証の確保、延期費用と危険な移行の比較にある。継続、再計画、停止を選ぶ最終権限も含まれる。
大規模計画には、既に使った費用、発表済み日付、経営者の評判、動員済み供給者、参加者の投資が積み上がり、続行圧力が強まる。2022年11月の停止は、停止可能性を示した。説明責任上の問いは、もっと早い時点で方向または少なくとも公表言語を変える閾値があったかである。公開資料では各取締役の知識を確定できないため、個人について推測すべきではない。
将来の記録は、誰が稼働日を変えられるか、誰が試験範囲縮小を受け入れるか、誰が非機能要件を所有するか、保証上の反対が残る中で誰が節目を承認できるか、誰が市場発表の文言を決めるかを明示する。複数委員会が別の会議体で解決済みと思えば、責任境界自体がリスクになる。
資源競合も取締役会に見せる必要がある。現行系保守、新設計、規制是正、日常運用が同じアーキテクト、試験担当、運用専門家を求めることがある。希少人材が複数のクリティカルパスに同時存在する前提は計画ではない。統合ポートフォリオで衝突を示し、ライブサービスの人員を保護すべきである。
経営は統合された真実を、供給者は範囲内の真実を担う
上級経営は技術証拠、供給者実績、参加者準備、取締役会監督、公表の間に位置する。固有の支配は統合である。各チームが正確に活動を報告していても、共通クリティカルパスの所有者がいなければ、全体結論は誤り得る。範囲、日程、品質、運用リスク、外部依存を同じ基準線で調整しなければならない。
機能延期、試験縮小、依存変更、暫定回避策はすべて予測とリスクモデルを変える。節目の実質が変われば、以前と同じ名称を使うべきではない。試験環境が「開いた」ことは活動事実であり、市場が「準備できた」ことは保証結論である。何を試せないのか、その不足が後の自信にどう影響するかを経営が説明する。
供給者と統合者は、契約範囲の技術、要員、品質、正確な問題報告に責任を持つ。しかし清算・決済ライセンスは供給者へ移っていない。ASX は要件受入れ、中央統合、参加者義務、公表日程、移行を支配した。契約上の納品を満たしても、システム全体が運用可能とは限らない。
統合モデルは境界が明確な場合にのみ機能する。統合者は統合設計、依存図、試験戦略、リリース計画、欠陥像を維持し、製品チームは制約とカスタマイズ影響を明かす。ASX は双方を問い直せる内部能力を維持する。統合者自身の作業が妥当かを統合者の説明だけに依存するなら、独立性が弱い。
規制は証拠を要求できるが能力を代行できない
ASIC は市場および清算・決済ライセンスに関する行為と義務を監督し、RBA は金融安定基準に基づいて施設を評価する。共同監督は範囲を広げるが、調整境界も作る。証拠要求、重大性、エスカレーションを整合させ、一つの報告経路で完了した問題が別の経路で見えない状態を防ぐ必要がある。
2025年に始まり、2026年に最終報告が公表されたより広い ASX 調査は、ガバナンス、能力、リスク管理、重要市場インフラのスチュワードシップを対象にした。制度的な観察は重要な背景だが、すべてが旧 CHESS 更改の直接原因だと証明するものではない。後の障害や組織課題を一つの事件に圧縮せず、各因果境界を守る必要がある。
規制当局は報告を要求し、ライセンス義務を評価し、是正を促し、法的結果を課せる。だが、日常の技術能力や統合判断を生み出すことはできない。遅れて圧縮された情報を受け取るだけでは、以前の管理判断をリアルタイムで直せない。証拠は運営者の活動から継続的に生成される必要がある。
持続的な監督は、是正行為の数ではなく有効性を問う。なぜ勧告が閉じたのか、リスクがどう変わったか、例外が日程へどう反映されたか、参加者結果が移行判断へどう入ったか、現行系の強靱性と新システム準備をどう比較したかを継続して示させるべきである。
保証台帳が修復を監査可能にする
保証台帳は版管理された要件から始まる。各要件を所有者、アーキテクチャ判断、対象リリース、試験、運用証拠に結ぶ。クリティカルパスは余裕のない仮定を明示する。取締役会と経営の判断は選択肢、異論、独立見解、停止条件を残す。供給者の約束は、契約日だけでなく ASX が所有する受入れ基準に接続する。
同じ台帳に、参加者準備、現行 CHESS の容量と復旧、移行と復帰の証拠、障害、規制上の指摘、是正約束、公表結論を入れる。総合的な緑は、下位証拠に未解決の重大矛盾がない場合だけ成立する。例外を受け入れたら、所有者、期限、補完統制、失効日を見える状態に保つ。
すべてを公開する必要はない。有用な透明性は、節目の正確な意味、各リリースに含むものと含まないもの、完了した試験類型、未完の独立指摘、受け入れた残余リスクを説明する。機密を守りながら、参加者が中央の状態と自らの準備を合わせられる。
公表表現も台帳に接続する。「順調」「準備済み」「正常運転」という結論は、日時、範囲、根拠へたどれるべきである。短期の正常運転を長期強靱性に拡大せず、清算の稼働を全更改完了に拡大せず、規制措置をすべての統治問題の解消に拡大しない。
目的は不確実性を消すことではない。重要インフラ更改に無リスクはない。目的は、不確実性を記録し、割り当て、試験し、伝え、停止権と結ぶことである。ASX が市場に中央日程を信頼して投資するよう求めたため、その信頼を支える証拠が公共の説明責任になった。
稼働判定は技術、参加者、表現を同時に試す
重要なリリースの承認では、三つの証拠群を同じ時点で確認する必要がある。第一はシステムである。機能範囲が承認基準線と一致し、性能と容量が通常時だけでなく異常時を覆い、データ照合、セキュリティ、復旧が定めた条件を満たすかを問う。「試験を実行した」は活動であり、環境、データ、網羅性、終了基準が十分でなければ準備の結論にはならない。
第二は市場の共同準備である。中央側の試験合格だけでは、参加者が実際の接続、例外処理、復旧、照合を行えるとは限らない。未準備の参加者がネットワーク全体へ与える影響、暫定的な手作業の容量と誤り、負担の偏りを評価する必要がある。単純な合格率ではなく、機能上の重要性と参加者類型に基づき判断する。
第三は表現の整合である。取締役会資料、規制当局への報告、参加者への案内、公表文が同じ範囲と時点を使っているかを確認する。技術記録に重要な未解決事項があれば、外部文言だけが広い安心を示してはならない。清算だけの Release 1を、決済とサブレジスターまで完了したように受け取れる言葉で示さない。
判断には逆向きの質問も必要である。何が起きれば延期するのか。稼働を妨げない欠陥でも、どの監視や制限が要るのか。復旧策は文書にあるだけか、実際に演習したか。供給者が持つ証拠を ASX はどう独立確認したか。反対意見を記録し、リスク受入れ理由、補完統制、再確認日を残すことで、承認投票が不確実性を消したように見せることを防げる。
稼働後も、数時間、数日、数週間で観察目標を分ける。初期には取引完全性、滞留、手動介入、参加者連絡を見て、その後は容量傾向、反復異常、修正、供給者応答を調べる。月末や極端な負荷、復旧場面はさらに長い観察を要する。短期の正常を短期証拠として正しく表示すれば、長期強靱性へ過大拡張することを防げる。
修復が有効かどうかは、悪い情報が決定を変えるかで測れる。試験の不足が予測を変え、参加者の遅れが順序を変え、供給者依存が資源判断を変え、内部確度の低下が公表表現を狭めるなら統制は機能している。問題を大量に記録しても、節目、資源、言葉が何も変わらなければ、記録密度だけが上がり説明責任は強くならない。
結論にも証拠の限界がある
公開記録には、取締役会資料と議事録の全体、内部連絡、供給者作業資料、ソースコード、全アーキテクチャ判断、欠陥一覧、試験結果、参加者費用が含まれていない。各個人が各時点で何を知ったか、責任を割合で割り当てること、特定人物の意図的隠蔽を断定することはできない。
技術の反実仮想も存在しない。同じ要件、人員、ガバナンス、日程を従来型アーキテクチャに置けば成功したという実験はない。Release 1の稼働も、旧設計が異なる統制の下でどうなったかを証明しない。ブロックチェーンだけ、または一層の管理だけを全原因にする主張は証拠を超える。
一方、支配境界は示せる。ASX は中央計画と移行判断を、供給者は範囲内の納品を、参加者は自らのシステムを、規制当局は法定手段を支配した。検証可能な修復とは、各主体が支配に対応する証拠を出し、主体間、リリース間、社内状態と社外言語の間に所有者不在の隙間を残さないことである。
資料一覧
- https://www.asic.gov.au/about-asic/news-centre/find-a-media-release/2026-releases/26-143mr-asx-ordered-to-pay-20-5-million-penalty-for-misleading-conduct-relating-to-chess-replacement-project/
- https://www.asic.gov.au/about-asic/news-centre/find-a-media-release/2026-releases/26-119mr-asx-admits-misleading-conduct-relating-to-chess-replacement-project/
- https://asic.gov.au/about-asic/news-centre/find-a-media-release/2024-releases/24-177mr-asic-sues-asx-for-alleged-misleading-statements/
- https://download.asic.gov.au/media/zx2jijyi/24-177mr-concise-statement-13-august-2024.pdf
- https://www.asx.com.au/content/dam/asx/about/media-releases/2022/60-17-november-2022-CHESS-Replacement-ASX-reassessing-financial-derecognition_.pdf
- https://download.asic.gov.au/media/sypbow5u/22-320mr-asic-rba-letter-to-asx-board.pdf
- https://asic.gov.au/about-asic/news-centre/news-items/asic-acknowledges-asx-s-release-of-the-chess-program-external-review-special-report-and-audit-report/
- https://www.asic.gov.au/regulatory-resources/markets/inquiry-into-asx/
- https://www.asic.gov.au/about-asic/news-centre/find-a-media-release/2026-releases/26-059mr-asic-publishes-asx-inquiry-panel-final-report-and-acknowledges-observations/
- https://www.asic.gov.au/about-asic/news-centre/find-a-media-release/2025-releases/25-303mr-asic-announces-transformational-package-to-safeguard-australia-s-financial-markets-in-response-to-asx-inquiry-interim-report/
- https://www.asx.com.au/content/dam/asx/about/media-releases/2023/70-20-november-2023-chess-replacement-solution-announced-and-2024-consultation.pdf
- https://www.rba.gov.au/media-releases/2023/mr-23-32.html
- https://www.rba.gov.au/payments-and-infrastructure/financial-market-infrastructure/clearing-and-settlement-facilities/assessments/2023-2024/developments.html
- https://www.rba.gov.au/payments-and-infrastructure/financial-market-infrastructure/clearing-and-settlement-facilities/assessments/2024-2025/march/pdf/out-of-cycle-assessment-report-march-2025.pdf
- https://www.aph.gov.au/Parliamentary_Business/Committees/Joint/Corporations_and_Financial_Services/OversightofASIC/Competition_in_clearing_and_settlement_and_the_ASX_CHESS_Replacement_Project/Chapter_5_-_The_ASX_CHESS_Replacement_Project_-_Background
- https://www.aph.gov.au/Parliamentary_Business/Committees/Joint/Corporations_and_Financial_Services/OversightofASIC/Competition_in_clearing_and_settlement_and_the_ASX_CHESS_Replacement_Project/Chapter_7_-_The_ASX_CHESS_Replacement_Project_-_ASX_Governance
- https://www.asx.com.au/markets/clearing-and-settlement-services/chess-project/release-1-clearing
- https://www.asx.com.au/content/dam/asx/markets/clearing-and-settlement-services/technical-committee/2026/chess-replacement-technical-committee-6-may-2026-presentation.pdf

