要約

  • 2026年3月期の連結売上高は21兆973億ルピー(前年比22.0%増)、EBITDAは12兆1,268億ルピー、マージン57.5%で300ベーシスポイント改善した(4Q FY26プレスリリース、四半期ハイライト、CNBC-TV18)。
  • 営業フリーキャッシュフローは6,042億4,200万ルピーで会社側が「過去最高」と説明し、純有利子負債(リース除く)は13兆8,508億6,000万ルピーから9,104億8,500万ルピーへ34%減った(四半期IRパック、プレスリリース)。
  • インド無線事業の売上高は前四半期比約0.1%増にとどまり、Q4のARPUは257ルピー(前年同期245ルピー)。市場予想の0.7〜1%を下回った(CNBC-TV18、四半期ハイライト)。
  • 2025年3月に5,985億ルピーを前倒し返済し、累計6兆6,665億ルピーで約7年分・1兆1,640億5,000万ルピー相当の将来分割払いを消した。残るスペクトラム債務(AGR除く)は約5兆2,000億ルピー、平均利率約7.22%、FY2042まで続く(2025年3月発表、FY25プレスリリース)。
  • 遡及的なワンタイム・スペクトラム賦課金を無効としたボンベイ高等裁判所の2026年6月8日命令は、最高裁が執行停止を認めず控訴を受理したことで、まだ確定していない(Voice&Data)。

数字が示すもの、示さないもの

連結売上高は21兆973億ルピーで前年比22.0%増、EBITDAは12兆1,268億ルピー、マージンは57.5%で300ベーシスポイント改善した。インド事業だけを取れば、売上高は15兆5,066億ルピー(17.5%増)、EBITDAは9兆3,197億ルピー、マージンは60.1%に達する。前年は売上高17兆2,985億ルピー、EBITDA9兆4,249億ルピー、マージン54.5%だった(プレスリリース、四半期ハイライト、FY25プレスリリース、JM Financial)。

ここで注意が必要なのは、FY25の比較値が四半期投資家向け資料と前年の会社発表で一致しない点だ。資料は連結範囲の違い(例えばIndus Towers)に起因すると説明しているが、抜粋からはその基準を確認できない。したがって本稿では、単一の再計算済み系列として提示せず、報じられた数値をそのまま併記する。

現金創出の内訳

FY26の連結設備投資は4兆7,522億ルピー、インド設備投資はパッシブ・インフラを含めて3兆9,654億ルピーだった。経営陣は決算説明会で、パッシブを除くインド設備投資を約3兆1,000億ルピーと述べている(四半期ハイライト、説明会記録)。

EBITDAaLから設備投資を差し引いた営業フリーキャッシュフローは6,042億4,200万ルピーで、会社はこれを過去最高と位置づける。同じ説明会では「4兆1,500億ルピー強」という発言もあり、会社が範囲を定義していないため、この二つは直接比較できない。監査済みの営業キャッシュフローではなく、設備投資控除後の指標である点も、数値の意味を読むうえで重要だ(四半期IRパック、年次報告書、説明会記録)。

負債はどこまで減ったのか

純有利子負債はリース債務を除くベースで9,104億8,500万ルピーとなり、1年前の13兆8,508億6,000万ルピーから34%減った。リースを含む総額では16兆4,788億8,000万ルピー(前年20兆3,838億4,000万ルピー)となる。EBITDA比では、リース除くベースが0.79倍(前年1.42倍)、リースを含むベースが1.29倍(前年1.86倍)で、二つの比率は異なる基準を使っている。説明会での「1.1」という発言も範囲が示されていない(プレスリリース、四半期IRパック)。

前倒し返済という選択

2025年3月、会社は2024年オークション分のスペクトラム分割払い5,985億ルピーを前倒しで返済した。累計の前倒し額は6兆6,665億ルピーに達し、平均残存期間より約7年早く、1兆1,640億5,000万ルピー相当の将来分割払いを解消した計算になる。残るスペクトラム債務(AGRを除く)は約5兆2,000億ルピー、平均利率は約7.22%で、年次分割払いはFY2042まで続く(2025年3月発表、FY25プレスリリース)。

監査済みの連結キャッシュフロー計算書は、通信省への支払いが2012年、2015年、2016年、2021年、2022年、2024年の各オークション分の前払い・分割払い・利息を含むと説明している。スペクトラムの現金流出と利息は単一年度ではなく複数のオークションにまたがって連動しており、前倒し返済の効果もその全体像のなかで読む必要がある(提出決算資料)。

まだ確定していない賦課金

ボンベイ高等裁判所の2026年6月8日命令は、遡及的なワンタイム・スペクトラム賦課金の請求を無効とした。最高裁は執行停止を認めず、通信省の控訴を受理したため、この判断は最終ではない。報道によれば、中央政府側の銀行保証部分は約3,300億ルピー、アイルテルは高裁判決による軽減額を約8,414億ルピーと証券取引所提出書類で推計し、FY26年次報告書は2026年3月までの累積利息を約1兆2,137億ルピーと記載している。三つの数字は異なる要素を測っており、比較できない(Voice&Data)。

分配と隣接領域

取締役会はFY26の最終配当を完全払込株式1株につき24ルピー、部分払込株式1株につき6ルピーと提案した。株主承認を条件とし、前年の16ルピーから引き上げられる。資本配分の優先順位は、コア事業、次に負債削減、その後にデータセンター・金融サービス・クラウドなどの隣接領域と説明されている。取締役会はアフリカ事業の追加16.3%を取得する株式交換も承認した。アフリカでの最大1億米ドルの自社株買いにより、グループの実効持株比率は66.60%から66.62%へわずかに上昇している(プレスリリース、四半期ハイライト、説明会記録、FY25プレスリリース、提出決算資料)。

契約者と利用量

Q4 FY26のインド・スマートフォン・データ顧客は2億9,680万人で、前年同期より2,000万人増えた。データトラフィックは26,688ペタバイトで32.8%増加している。契約者と利用量は伸び続けている一方、無線事業の売上高成長はほぼ横ばいであり、この乖離が次の四半期の焦点になる(四半期ハイライト)。

何が実際に変わったのか

2026年3月期に実際に変わったのは、スペクトラム債務の前倒し返済、それに伴う純有利子負債の減少、そして営業フリーキャッシュフローの水準だ。変わりきっていないのは、無線事業の収益成長と、係争中の賦課金の扱いである。前者が構造的なものか循環的なものかは、次の四半期のインド無線売上高、ARPU、そして会社がレバレッジ指標にどの基準を採用するかで判断できる。

本稿の数値は、公開された会社資料および第三者報道を、プロバイダ経由の抜粋として参照したものであり、原資料をページ単位で精査したものではない。同一の数量が異なる基準で示されている場合は、両方を併記し、単一の数値に統合していない。関連するディレクトリ項目はBharti Airtel Limited (India)にある。