Summary
- SR Policy の「アクティブ」は、ヘッドエンドが有効な候補パスの中から最良のものを選んだことを示す。特定のフローがステアリング条件に一致したことまでは示さない。
- 有効な証拠は、ポリシー識別子と選択候補を、セグメントリスト、BSID/FIB、トラフィックセレクター、パケット符号化、観測経路、測定したサービス目標へ結び付ける。
- RFC 9256 の BGP デフォルト動作では、認可されたカラーや一致する有効なポリシーがないルートは、別のポリシーがアクティブでも通常の IGP 解決を使い得る。
緑の表示でもフローは動かなかった
顧客から遅延悪化の申告を受けた場面を考える。コントローラーには目的の SR Policy が有効でアクティブと表示され、最優先の候補パスと妥当そうなセグメントリストも見える。ところが、該当イングレスからのプローブは通常の IGP 最短経路を通る。
矛盾ではない。ポリシー画面が答えるのは、あるヘッドエンドでどの有効候補がそのポリシーを代表しているかという選択の問いである。プローブが答えるのは、そのパケットが実際にどの命令を受け、どこへ運ばれたかという転送の問いだ。ルートが認可カラーとネクストホップの組み合わせを満たさなければ、ステアリング規則に一致せず IGP 解決を維持できる。ポリシーは正常にアクティブでも、調査対象のトラフィックを一切運んでいない可能性がある。
「アクティブ」は短く、機械判読でき、緑で表示されるため結論に見えやすい。しかし因果の鎖では入口に近い事実であり、結果ではない。
アクティブ状態が確定する範囲
RFC 9256 は SR Policy を <Headend, Color, Endpoint> で識別し、同一ヘッドエンドでは <Color, Endpoint> で識別できるとする。ポリシーには複数の候補パスがあり得る。候補は有効なら使用可能で、アクティブパスは主として preference で決まる最良の有効候補である。関連状態が変われば選択は再実行される。
これは重要な制御プレーン証拠だ。対象ポリシーと現在それを表す候補を特定し、アクティブな一つまたは複数のセグメントリストと重みも示せる。ただし対象トラフィックがポリシーへ誘導されたとは限らない。RFC 9256 は、保護動作の例外を除き、「実際にそのポリシーへステアされたトラフィック」がアクティブ候補を使うと規定する。この条件部分こそが運用上の要点である。
複数のセグメントリストがアクティブなら、フロー単位の重み付き分散があり、その精度は実装依存である。一つの成功プローブで全分布を証明することも、一つの予想外のプローブで全フローがポリシーを外れたと断定することもできない。
ステアリングは別の判定である
BGP 宛先ステアリングの既定動作では、ルートのネクストホップ、認可済み Color Extended Community、そのネクストホップとカラーに一致する有効な SR Policy が結び付く必要がある。一致すればルートはポリシー上で解決できる。一致しなければ、RFC 9256 が示す既定動作はネクストホップへの通常の IGP 解決である。
ダッシュボードは異なる状態を一つの安心材料に圧縮しがちだ。ポリシーはアクティブだがルートにカラーがない、カラーはあるが認可されていない、ネクストホップ由来の endpoint が違う、一致ポリシーが無効になった、といった状態がある。無効時に IGP へ戻さず破棄する設定もある。いずれも候補選択ではなくステアリングと解決の事実だ。
Binding SID も永続的な識別子ではない。BSID はアクティブ候補に属し、パケットをポリシーへ入れる転送命令となる。利用可能性の確認と競合時の警告が必要で、ポリシーの存続中に関連付けが変わることもある。したがって RFC 9256 は BSID をポリシー識別に使わないよう求める。安定した識別子はポリシータプルであり、BSID は検証対象の現在状態である。
決定的な命令はパケットにある
RFC 8402 は Segment Routing を、ヘッドエンドで付与する順序付き命令として説明する。SR-MPLS ではラベルスタック、SRv6 では通常 SRH 内の順序付き SID リストで表現される。ローカルのアクティブセグメントがポリシー BSID と一致すると、パケットはそのポリシーへ誘導される。
パケットは制御状態で代替できない証拠を持つ。ラベルや SID の観測で期待した命令が付与されたかを確認でき、転送カウンターでプログラムされた動作が使われたかを確認できる。経路対応プローブは結果の道筋を、同時間帯の遅延・損失測定はサービス目標を検証する。異なる問いへの答えを接続して初めて、選択された意図と提供された挙動がつながる。
保護動作には時間的な例外がある。構成 IGP セグメントを TI-LFA が保護する場合、高速迂回中の修復経路は SR Policy の厳密な制約を満たさないことがある。アクティブなポリシーと一時的な経路逸脱は両立し得るため、インシデント記録には時刻と保護状態が必要だ。
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