要約
- Accel-KKR傘下のAvocet BidcoはEleco株1株につき235ペンスの現金を提示した。完全希薄化後の株式価値は約2億760万ポンド、企業価値は1億9240万ポンドとなる。
- 発表前終値へのプレミアムは74.7%。ただし事業評価の核心は、2025年EBITDAの20.2倍に対し、Cash EBITDAでは31.9倍になる点だ。
- Elecoの2025年ARRは3430万ポンド、継続収益比率は81%で、現金1630万ポンドを持ち無借金だった。2026年6月のARRは3550万ポンドに伸びた。
- 当初の「支持」45.2%は、撤回不能な確約と法的拘束力のない意向表明書の合計であり、承認済みという意味ではない。その後の公表値は49.2%、さらに48.37%へと動いた。
買収価格は一つでも、その読み方は少なくとも三つある。株主にとって235ペンスは、流動性の低いAIM銘柄を現金化する価格だ。取締役会にとっては、単独で投資を続けるリスクと交換できる確実な価値である。Accel-KKRにとっては、継続収益を将来の現金に変えるまで回収できない投資額だ。
提案価格は、発表直前の9月9日終値134.5ペンスを74.7%上回る。3カ月の出来高加重平均に対して86.0%、6カ月平均に対して89.9%、12カ月平均に対して77.7%の上乗せだ。これは出口の魅力を示すが、事業そのものの収益力を直接測るものではない。
同じ企業価値に二つの利益倍率
買収案は完全希薄化後の株式価値を約2億760万ポンドとする。そこから財務ポジションを反映した企業価値は1億9240万ポンドだ。差額1520万ポンドはElecoのネットキャッシュと方向性が一致するものの、それだけで買収価格全体の精密な調整表になるわけではない。
発表によれば、この企業価値は2025年EBITDAの約20.2倍、同年Cash EBITDAの約31.9倍に当たる。逆算すると、それぞれの分母は約952万ポンドと603万ポンドになる。これは公表値からの計算であり、利益予想ではない。
Cash EBITDAは、EBITDAから無形資産として資産計上した開発支出を差し引くと定義されている。ソフトウェア開発費は会計上、当期費用にせず資産にできる場合がある。しかし製品を更新し続けるには現金が要る。そこを当期の経済コストとして戻すと、倍率は11回転以上高くなる。継続課金モデルの評価では、売上が繰り返すかだけでなく、その売上を維持する開発費が繰り返すかも問わなければならない。
2025年決算の調整後EBITDAは1022.9万ポンドだった。Veeuzeに関する234.3万ポンドの非現金減損を含む法定EBITDAは685.9万ポンドで、減損前は約920万ポンドとなる。用途の異なる数字を、買収発表のEBITDAやCash EBITDAと入れ替えるべきではない。
継続収益の質を支えるもの
Elecoは建設会社ではなく、建築物のライフサイクルに使われる専門ソフトウェア会社だ。工程計画、見積もり、コスト管理、保守、施設管理、プロジェクトポートフォリオを支える。日常業務の奥深くに入るほど解約は難しくなる一方、製品の停滞や移行の失敗は顧客の信頼を大きく損なう。
2025年の売上高は20%増の3881.6万ポンド。ARRは3430万ポンド、継続収益は3131.3万ポンドで売上の81%を占めた。調整後税引前利益は730万ポンド、フリーキャッシュフローは820万ポンド。年末現金は1630万ポンドで、借入金はなかった。
2026年上期にはARRが3550万ポンドへ増え、公表ベースで16%、オーガニックで約23%伸びた。継続収益は1690万ポンドで売上の85%。売上高は1986.2万ポンド、調整後EBITDAは561.4万ポンド、フリーキャッシュフローは350万ポンドだった。現金1540万ポンド、無借金を維持し、ネット・レベニュー・リテンションは113%を超えた。
単純計算では、企業価値は2025年ARRの約5.61倍、2026年6月ARRの約5.42倍、2025年売上高の約4.96倍になる。ただし契約期間、粗利益率、導入費、開発費の資産計上方針が違えば、同じ1ポンドのARRでも価値は違う。
Accel-KKRは製品開発、SaaS化、AI導入、国際展開、買収を加速する考えを示した。同社は累計230億ドル超のコミットメントを持つとしている。買収成立後のおよそ6カ月で、市場投入、クロスセル、価格・パッケージ、製品基盤、AIなどを検討する予定だ。これは支配権をどこに使うかの説明であって、利益の予測や確約ではない。
45.2%は「支持」の内訳であって承認ではない
9月10日の発表は、3816万1917株、発行済み株式の45.2%に相当する支持を掲げた。だが、取締役の40万8725株(約0.5%)とAllen & CoおよびKetteley家関係者の1978万8330株(約23.4%)は撤回不能な確約だったのに対し、Charles Stanley、J O Hambro、Janus、Jupiterの1796万4862株(約21.3%)は法的拘束力のない意向表明書だった。
9月17日にはTikvah Managementが338万614株について非拘束の意向を表明し、合計は49.2%へ上がった。翌18日、J O Hambroが72万5000株を売却したため、同社の意向表明は140万株に縮小し、合計は48.37%に下がった。この変化は不正を意味しない。「非拘束」という言葉が実務上何を意味するかを示している。
スキーム成立には別の基準がある。裁判所会議では、出席して投票する対象株主の人数で過半数、かつ投票された対象株式の価値で75%以上が必要だ。株主総会では別途、投票数の75%以上で特別決議を可決しなければならない。その後も裁判所の認可、命令の提出、その他条件の充足または放棄が続く。成立見込みは2027年第1四半期まで、ロングストップ日は同年3月10日だ。
対価はAccel-KKRファンドのコミット済みエクイティで全額賄われ、Rothschildが十分な資金を確認している。Eleco取締役会も全会一致で推奨している。それでも、資金の存在、取締役会の推奨、株主の意向、法的な承認は同じではない。
したがって、この買収の評価は二段階になる。まず235ペンスが株主に十分な確実性を与えるか。次に、Accel-KKRが31.9倍のCash EBITDAという入口価格を、製品力を損なわずに回収できるかである。
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